シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)の2025-26年秋冬コレクションが、2025年2月17日(月)、東京・新宿にて発表された。テーマは「Good morning, I wish I could fly, never mind」。
デザイナーの小塚信哉は、今季を製作するに際して思いを巡らせ、自身がよく絵に描くモチーフに「鳥」と「額縁」があることに思い当たった。これまであらゆるシーンで登場してきたにも関わらず、理由を明確にしていなかった2つのモチーフ。まず「額縁」は、“絵=あなた”をより美しく魅せるのが“額縁=ファッション”であるから。次に「鳥」は自由や軽快さを追い求め描き出したモチーフである一方、いつのまにか自分自身を“飛べない鳥=ペンギン”に投影していたからだ。
このペンギンが今季の主役といっていい。今季は、夢や希望を抱くペンギンたちの背中を“額縁”や“ささやかな言葉”で押す、ペンギンな誰かのための“ペンギン讃歌”となった。
2025年春夏コレクションと同様に「青」がキーカラーとなるが、今季は特に「青」を強く打ち出している。ここに黒や白を織り交ぜ、真冬の早朝のような、どこか朧気で夢うつつな情景を表現した。ペンギンを思わせるマスクや羽といった装飾も青で統一し、ルックに奥行きを生んだ。
主軸であるペンギンのモチーフは、様々な形で衣服を彩る。たとえば、シングルブレストのジャケットにあしらったペンギンの刺繍。異なる色調の青とビーズで描き出した。一方で、“飛べる鳥”を思わせる羽毛でできたトップスやパンツも登場。水陸に適応した硬いペンギンの羽毛とは正反対ともいえる、ふわふわの羽毛でぴたりと身体を覆っている。“空を飛んでみたい”という隠し切れない夢を映す、シニカルなウェアとなった。
もう1つのテーマである「額縁」は、ワークウェアと組み合わせているのが印象的。2羽のペンギンが対になって額縁の中に並ぶ、リラックス感のあるオーバーオールがその好例だ。このほか、ディッキーズ(Dickies)とのコラボレーションによるワイドパンツも登場した。
ショー序盤には、額縁そのものを抱えたルックもお目見え。小塚が考える額縁とファッションの関連性を直接的に表した。
コラボレーションにも注目したい。足元はコンバース(CONVERSE)によるスニーカーでカジュアルな印象に。また土屋鞄(TSUCHIYA KABAN)とのレザーバッグ、キジマ タカユキ(KIJIMA TAKAYUKI)とのキャップなどは落ち着いたデザインに仕上げ、静かに華やかさをプラスしていた。
飛べなくても、現状に不安があっても、そのままでいいのだという、全て認めて包み込むような優しさのもと完成させた今季。小塚はショーが終わった後、「このショーは“肯定ペンギン”という意味も含めているんです」と笑顔でコメントを残した。