タナカ(TANAKA)の2025年秋冬コレクションが2025年2月5日(水)、東京・代々木第二体育館で発表された。
「今までの100年とこれからの100年を紡ぐ服」をコンセプトに掲げるタナカが今シーズン向き合ったのは、ミリタリーウェアだ。デザイナーのタナカサヨリとディレクターのクボシタアキラは、戦争や紛争を100年後に紡いではいけないと考え、ミリタリーウェアが必要ない“パラレルワールド”を体現したコレクションを展開していく。
まずファーストルックでは、“攻撃”を暗示するミリタリーウェアを解体。日本古来の裂き織り技法を用い、ミリタリーナイロンをテープ状に裂き、ブリティッシュ風ツイード生地へと生まれ変わらせた。
垂れ蓋付きのパッチポケットが連なったベストや、異素材をパッチワークしたMA-1、カーキ色のレザーシャツといった、ヴィンテージのミリタリーウェアを再構築したルックも登場。ミリタリーウェアと対峙していく中で、クボシタアキラは「ミリタリーウェアとは闘うための服ではなく、命を守るための服だ」と気付いたという。それは、人間が“纏う”ことを始めた起源、そして衣服の本質とは離れていない。
同時に、日本の伝統的なディテールも散見された。たとえば、イギリス流のテーラードジャケットやチェック柄コートに着物に見られる鶴や花の横ぶり刺繍をオン。またスカートには、煌びやかな西陣織の帯のグラフィックを施すことで、和洋折衷を試みた。
ブランドの核となるデニムウェアも見逃せない。肩回りにボリューム感をもたせたジャケットや光沢のあるワイドパンツ、アートワークをプリントしたノースリーブドレスなどを新たに提案していたのが印象的だ。
ラストのパートでは、ピアノによる「戦場のメリークリスマス」の繊細なメロディが流れ、会場全体に雪が降り注いだ。平和の象徴である千羽鶴を一面にあしらったドレスを皮切りに、全モデルが白を基調としたルックで次々と登場。真っ白に染まった景色は、国と国の境界線を曖昧にすると同時に、ミリタリーウェアが持つ“戦闘服”の役割を浄化させていた。