シセ(SISE)の2022年春夏コレクションが、2021年9月1日(水)に発表された。
“drawing”とは、今季のシセのテーマである。自由に描かれる線の、軽やかな軌跡。ところで大雑把にドローイングとは、描き手の脳裏に浮かんだイメージを空間内に物質化・視覚化させる操作だといえよう。しかしここで、そのイメージは瑕疵なき完成形であるとは限らない。みずみずしく引かれる線は、時に震え、時に途切れ、そして時に飛躍し、思考の展開をうつしだす。
今季のコレクションに、流麗なフォルムと「解体・再構築的」な──ひとまずはそう形容しておく──デザインがともに現れるのは、それゆえに不思議なことではない。一方で、流れるようなラインを描くステンカラーコートや、オーバーサイズながらも端正な佇まいを漂わせるテーラードジャケット、重力にしたがってすとんと落ちるワイドパンツは、みずみずしいドローイングの軽快な軌跡を衣服にしたようである。
他方で、ドローイングが思考の展開を反映するものであるならば、それをたとえば「解体・再構築的」なテーラードジャケットに見て取ることができる。ダブルブレストジャケットを分解し、ジレを基調にスリーブを配し、フロントやサイドにファブリックパーツを重ねたような「解体・再構築的」なデザインは、むしろ壊すという時間軸の方向を反転して解するべきであり、流麗なフォルムを入念に模索するプロセスそれ自体を形象化したものであるように思われる。
だから、ここで線の運動とはダイナミックなものだ。リラクシングなロングコートには斜めにドレープを重ね、波打つような視覚的効果を高める。また、ディテールに目を向ければ、襟を重ねたシャツや、ドロップショルダーながらもショート丈で仕上げたMA-1にはストリングをあしらい、身体の揺らめきを軽やかに可視化している。
コレクションを構成するカラーは、決して奇をてらったところがない。流麗なカッティングとシルエットをストレートに引き立てるブラックやホワイトを中心に、端正なグレーやベージュ、ミリタリー色を脱したクリーンなカーキ、みずみずしいライトブルーが、心地よく鳴り響いている。