マラミュート(malamute)は、2019-20年秋冬コレクションを、2019年3月19日(火)に渋谷ヒカリエで発表した。
デザイナー・小高真理が日に日に移り変わる渋谷駅を歩いているうちに考え付いた、「ランドスケープ」が今季のテーマ。自然と人工的な物が発展を繰り返し、作られていく風景の特性を考えることは、人間の個性を考えることに似ている、とふと思い至ったという。
加えて、SFスリラー映画『ガタカ』に描かれていた、遺伝子操作によって管理されたディストピアや、ジム・ジャームッシュの映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』に登場する、何千年もの時を超え、ありとあらゆる時代の好きな物に囲まれながら、書物もiPhoneも自分のものにして生きるヴァンパイアもインスピレーション源に。
人の個性は遺伝子によって決まるのか、はたまた環境で作られるのか。時系列を超えて、過去の情報を取りに行けるネット社会の中で何を選び取っていくのか。「風景」から思い巡らせた壮大な問いを、そのままコレクションに投影した。
登場したウェアはスーツからジャージまで様々。しかも、意外性のあるディテールを付随させることで、既存の概念にとらわれない、幅広いアイテムの在り方を見せた。例えば、マスキュリンなスーツのジャケットの肩の部分にはフリルをあしらうことで、フェミニンな要素をプラスしている。また、ジオメトリックなノルディック柄は、ニットセーターではなくスポーティーなジャージに落とし込まれている。
わずかに退廃的なムードを漂わせたアンティーク調の花柄セットアップは、見た目とは裏腹にストレッチを効かせたアクティブなハイゲージニットで仕立てられている。しなやかなドレープと落ち感が、スカートのアシンメトリーな造形に調和し、独創的なエレガンスを描く。
ノルディックフックをあしらったウールのホワイトニットストールは、フックのかけ方次第でポンチョにもなる。ポンチョとして着ると、直線的なパターンが身体のラインを際立たせ、ユニークなフォルムを形作る。
擦り切れたタペストリーのようなニットジャカードの大判ストールは、切ってもほつれないウールの特性を生かし、自由な発想でカットして楽しむことが可能だ。また、ニットの袖にはファスナーを施し、開け方によって表情を変えられるような仕様に。自分の得たいスタイルを自ら取りに行ける可能性を、アイテムそのものに含ませた。
収縮させ、シャーリングを施したキルティング地のコートは、立体感のある仕立てで身体を丸ごと包み込む。それは服を“着ている”というよりも服に“埋もれている”かのようで、クッションのような肌触りが、シェルターの中にいるような安心感を演出する。かすれたようなダメージ感のブルーのドレスは、ヴィンテージライクな雰囲気が魅力。ディストピアの中にある布張りのソファがイメージソースとなっている。