サポートサーフェス(support surface)の2019年秋冬コレクションが、2019年3月20日(水)に表参道ヒルズ「スペース オー」で発表された。
今季のコレクションのキーワードとなるのは「Pure form」。デザイナー研壁宣男は洋服作りの上で、“ピュア”な形を追求したいという想いからこの言葉を思いついたという。洋服の原型を崩さないシンプルなデザインでありながらも、細部へのこだわりは惜しみなく。そんな研壁の丁寧な洋服作りが伺えるワードローブが、ランウェイに姿を現した。
モデル達が纏うのは、タートルネックやワンピース、ロングコートなど、日常に溶け込む“リアルクローズ”。けれどその佇まいはラフな雰囲気とはかけ離れていて、会場に流れる生演奏の優雅なメロディのように、上品で柔らかな空気を纏っていている。
その気品を作り出しているのは、洋服の細部に施されたディテールだろう。ニットを細かく詰まんで、緩やかなラインを作りだしたり、ワンピースの胸元にドレープをたっぷりと取ったり。またオールブラックのコートには、絶妙なシワ加工を施して動きのある表情を作りだしている。
またファブリックにも拘りを光らせる。レザーのように見える、かっちりとした素材のジャケットやパンツ、スポットライトを浴びて滑らかな光沢をみせるロングワンピースは、全て東レのウルトラスエードという生地が基になっている。着心地の良さだけでなく、エコな素材としても知られるこの生地に可能性を見出した研壁は、ワードローブに合わせた複雑な加工を施して、異なる表情を引き出しているのだ。
またそんなウルトラスエードを使用したロングコートは、よく目を凝らしてみるとインビテーションのデザインにも起用された円形のモチーフがあしらわれている。一見エンブロイダリーのように見えるこの模様だが、これも苦労の末に作り出した賜物。通常のパンチング加工よりも遥かに細かい複雑な加工で、極小の穴を複数連ねて描き出しているのだ。光の加減によって浮かびあがるこの特徴的なモチーフが、シンプルなワードローブに特別な意味を与えている。
深いグリーンや柔らかなオレンジ、アイボリーなど、マットな色合いがランウェイを埋めていくが、ショーの終盤には、そこにキラキラと輝く“煌めき”が加わっていく。眩い光を放つスパンコールは、ブラウスやスカート、ドレスに登場。そこに一切の“けばけばしさ”を感じさせないのは、やはりそれも計算尽くしたデザインだからだろう。オールブラックで纏めたルックでは、トップスの右半身を中心にスパンコールをあしらっている。雨が窓を伝うような流線的なスパンコールのラインは、儚さすらも感じられるものだった。