エルメネジルド ゼニア(Ermenegildo Zegna) 2020年春夏コレクションが、2019年6月14日(金)にイタリア・ミラノで発表された。今季のテーマは、「#UseTheExisting」。
会場に選ばれたのは、ミラノ郊外に位置する広大な製鉄所跡地。かつては人々から忘れ去られ、荒れ地と化したこの地域一帯も、街や新たな目的と繋がりを得て、再び都会的な姿に戻りつつあるという。
エントランスには、高級車が用意されていて、広大な敷地内に位置する会場へと観客を誘導する。辿り着いたのは、骨組みが剥き出しになった巨大な建物。演出として加えられた火薬の煙、そしてたった今振り出したばかりの夕立によって巻き起こった砂埃が入り混じり、会場には一気にインダストリアルな空気感が加速する。そして真っ白なスポットライトの合図で、ミラノファッションウィークの初日を飾るショーがスタートした。
今季のワードローブの最大の特徴となるのは、テキスタイルに施されたシワ加工。グレーの端正なシルエットのスーツには、くしゃっとした柔らかなシワ加工をいれることで、親しみのあるラフな印象をプラス。
また、ストライプ柄の薄ピンク色のスーツには、ライン状の真っ直ぐなシワをランダムに配置した。柄とシワが混じることで、独特な見え方を演出し、複雑な模様が浮き上がるように見える仕掛けのようだ。
コレクション全体を通して感じたのは、クリエイティブ ディレクター アレッサンドロ・サルトリが得意とするストリートやスポーティーな要素を抑えたスタイリッシュなムード。グレーのブルゾンや、ブラックのレザージャケットといったアウター群は、ショート丈が目立つ。ボトムスには、細身のセンタープレスのパンツを合わせることで、無駄のないクリーンな印象をプラスする。
ワードローブを象るファブリックには、艶やかな光沢を放つテクニカルシルクや軽量かつ頑丈なウールなど、デザイナーのこだわりを詰め込んだ素材が選ばれているのも今季の特徴。
実はそれらのファブリックは、今季のテーマをもとに、最新のリサイクル技術で生まれた賜物。そこには、新たな可能性を秘めて生まれ変わろうとしているこの会場ともリンクした、“サステナビリティ”のアイディアがベースとなっている。
コレクションを彩るカラーパレットは、セメント、スチール、カーボン、サンド、マットゴ ールドのアーストーンなど、インダストリアルなムードを助長する無機質な色彩が多く並ぶ。それらの中には、工場の煙によって、ところどころ“もや”がかかったような色ムラのあるデザインも存在する。