ゼニア(ZEGNA)の2025年秋冬コレクションが、2025年1月20日(月)、イタリアのミラノにて発表された。
今季のゼニアが目を向けたのが、ウールという素材だ。極上の羊毛から紡ぎだされ、軽く、柔らかく織りあげられた「ヴェリュス・オウレウム(Vellus Aureum)」──ゼニアが手がけるこのファブリックは、最高峰の毛織物の代名詞となっており、2023年には糸の太さ9.4ミクロンを達成し、羊毛を原料とする糸の細さとして世界記録を更新しているという。
この意味で「ヴェリュス・オウレウム」という織物は、ゼニアというブランドに継承される技術ばかりでなく、今なお更新され続ける飽くなき探求という、二面性を体現しているといえるだろう。この、極上の軽やかさと柔らかさを持ったウールを軸に繰り広げられる今季のゼニアは、端正さを保ちつつも、心地よいボリューム感と力強い表情を示している。
端正さと心地良さの交錯を見てとれる最たる例が、テーラリングだ。シングルブレストやダブルブレストで仕立てられたテーラードジャケット、チェスターコートなどは、セットインショルダーを採用しつつも、ほどよく余裕を持たせて。ボディは直線的なラインがボクシーなシルエットを生みだし、ラペルの重心は幾分下に設定することで、確かな構築性を基盤としつつも、ソリッドすぎることのない抜け感ある佇まいに仕立てられている。
この、ボリュームと抜け感のある佇まいが、コレクション全体の穏やかな雰囲気を形作っている。スタンドカラーのブルゾンやレザージャケットは、とりわけバックにボリュームを持たせることで、丸みを帯びたフォルムに。ニュアンスカラーのシャツはややオーバーなサイズに仕立て、スラックスはタックを大きく取ることで、量感のあるシルエットを演出。随所に見られるVネックニットも、首周りを大きく開くことで、リラックスしたムードを醸しだす。
シルエットとしてリラクシングな洗練を示す一方、ジャケットやコート、シャツ、スラックスなどに広く採用されたチェックやツイードが、力強い表情を加えている。とりわけ、トラディショナルな雰囲気を湛えたグレンチェックは、格子を大きく設定することで、明確な印象を与える。また、テーラリングの仕立てにブルゾンのカジュアルさを組み合わせたジャケットなど、ニュアンスに富んだツイードを多く用いるとともに、ゼニアを代表するスタンドカラージャケット「イルコンテ(Il Conte)」はシアリングでアップデートし、ロングコートの襟もふんわりとしたシアリングで切り替えるなど、温かみのある素材遣いが随所に見受けられる。
このように、絶妙なリラックス感を湛えた今季のゼニアは、色彩のうえでも温かく、心地良い。ニュアンスに富んだグレーやブラウン、ブラック、ベージュに加えて、深みあるバーガンディやダークグリーン、時として繊細にくすみを帯びたライトグリーンを採用しつつ、これらを全体としてトーン・オン・トーンでまとめることで、柔らかく調和した佇まいに仕上げている。