ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)の2025年秋冬メンズコレクションが発表された。
「エレガンス」つまり「品格」とは──文字通りにその言葉を開くのならば──、「品」という言葉に見るように、普通は何かしらの「位」というものがあって、その「格」が高いことを指すといえるだろう。そこでは、「品」というある枠組みが設定されている。今季のジョルジオ アルマーニが追求するのは、しかし、そうした枠組みから解き放たれるかのような、自由なかたちの「エレガンス」である。
西欧の装いの「エレガンス」が、伝統的に、着用する人の身体に衣服が立体的にフィットすることであったならば、ジョルジオ アルマーニにおいては、もちろん身体との密接な関係性を保ちつつ、むしろ身体を優しく包みこむ、その柔らかさから「エレガンス」が立ち上がってくるのだといえる。「エレガンス」の最たる例であるテーラリングや、端正なロングコート、ミリタリージャケットやレザージャケットなどに見るように、ショルダーは幾分ドロップし、身体を締め付けることのないリラクシングなシルエットを示すとともに、トラウザーやカーゴパンツもまたボリュームを持ち、優雅なドレープを描きだす。
そこには、直線的なシャープさではなく、曲線的な柔らかさがある。それは、ウェアを特徴付けるディテールにも見て取れるだろう。たとえばテーラードジャケットやロングコートは、代表的と言うべきシングルブレストやダブルブレストは見られつつ、優雅に曲線を描くショールカラーが多用されている。なるほどショールカラーも、ラペルをシルクで切り替えたタキシードならばドレッシーであるけれども、今季のジョルジオ アルマーニにおいては光沢の華やぎは影を潜め、柔らかなシルエットと呼応する丸みある雰囲気を加味しだしている。
素材においても、柔らかなシルエットと溶けあう、温かみのあるものを数多く見出すことができる。テーラードジャケットばかりでなくミリタリージャケットには、ムラ感と立体感のあるツイードを。スタンドカラーコート、ブルゾンやシャツジャケット、波打つようなパンツには、艶やかなベルベットを。ベストにはシアリング、ロングコートにはファーと、起毛感のある素材も用いるほか、レザーにおいても、底光するような艶やかさであったり、経年変化を帯びたような風合いであったり、コレクション全体を通して豊かな質感が追求されている。
カラーも、柔らかなエレガンスと調和する。ニュアンスに富んだ濃淡さまざまなグレーを軸に、温かみあるベージュやブラウンを交えるほか、深みあるダークグリーン、グレーに鮮やかなアクセントを添えるレッドやバーガンディ、目の覚めるようなブルーを取り入れ、深みある色彩感にまとめている。