エルメス(HERMÈS)の2020-21年秋冬メンズコレクションが、フランス・パリで2020年1月18日(土)に発表された。
全45体からなる今季のコレクションは、キャメル・ノワゼット・チャコールグレーなどを基調にエクリュやヴァニラを差し色にした、マチュアなカラーリング。しっとりとした紳士の品格を保ちながらも、柔らかな空気感やキュンと心を刺激するデザインアクセントも取り込み、都会的でモダンな印象に感じられる。
象徴的なのは、エルメスならではのレザーの巧みな表現だ。ファーストルックに登場したロングコートは、さらりと羽織れる軽快さを放ちながらも、実はなめしたカーフレザーを使った職人技が光るピース。触れると肌に吸い付くように柔らかく、身体の動きにあわせて変形してくれるような軽やかさを持つ。
また、デイリーで着れる機能性を追求しているのもポイント。フードは取り外し可能で、レザー仕立てなのに重さは感じさせない。ショーピースではなく、実生活を豊かにする大人のための贅沢なアウターだ。
通常取り扱いが難しいとされる鹿革にも着目。しぼ感のある味のある風合いは良いとされるが、重くアレンジがしにくいとされるディアレザーをソフトに加工して、肌なじみのよいパーカーをデザインした。
ムートンのブルゾンは、ブラックをベースにシックにまとめ、襟口のベルトやポケットに温かみのあるブラウンレザーをあしらって、控えめな遊びを加えている。
レザーへの探求心を常に磨きながらも、いまを感じいまを取り入れているところがエルメスの素晴らしいところ。今季は、デジタルアートなどを中心に活躍するアーティストのミゲル・シュヴァリエとコラボレーションして、うねりを効かせたエルメスオリジナルデザインを製作。
地層のように幾重にも重なったラインが特徴的なモチーフは、シルクプリントのシャツだけでなく、機能性に富んだリバーシブルジャケットやニットトップスなどに起用。シャツには、星屑のように細かな刺繍をして、フォーマルピースの中に芸術性を取り込んでいる。
コーディネートは首元がポイントに。首元でリボンのように結んだスカーフ付きのシャツは、ファッション好きの心をくすぐる逸品。すっきりとした立ち襟やスカーフ、また「シェーヌ・ダンクル」のディテールを使った新しいカードケースを首から下げたりして、首元に遊び心を加えたスタイルが繰り返し提案されている。
また、トワル・アイスと呼ばれるテクニカル素材の差し込みも、レザーの世界に彩りを添えた。氷のような透明感とつるんとしたツヤ感を持つ素材で仕立てた、中綿入りのジャケットやスラックスは、ナチュラルなファブリックと融合させることで、知的な印象をもたらしてくれる。