アキコアオキ(AKIKOAOKI)の2020-21年秋冬コレクションが、2020年2月10日(月)に東京・表参道のワールド 北青山ビルにて発表された。
デザイナーの青木明子が今季着目したのは、「男性/女性」という2つの「性」の可能性だ。女性が「男性」の装いをしたいと思うこともあれば、その逆もまた然り。2つの「性」は似ている部分もあれば、異なる部分もある。「性」の在り方は既存の枠を越え、本来はそれぞれの延長線上で自由になれるはずだと考えた。自由な装いを提示するにあたり、今回初めてメンズモデルを起用。既成概念に縛られない、ニュートラルな在り方を提示した。
コレクションは、陽の光が差すガラス張りのオープンな空間の中、プレゼンテーション形式で発表された。RMK(アールエムケー)が手がけた無機質なモデルのメイクや、点在する観葉植物やインテリアがコンセプチュアルなムードを漂わせる。モデルは空間の中にランダムに佇んでおり、美術鑑賞をするかのような近い距離感で世界観を表現した。
行き来する2つの「性」を表現するにあたり、レイヤードやフォルムによって輪郭をぼかし“曖昧さ”を投影させた。不均一にドットが広がる抽象柄のロングワンピースには、サイドをオープンにしたジレを重ね、肩にボリュームを持たせたブラウスには、繊細に広がるチュールスカートを合わせている。
また、腰よりも少し下の位置でベージュの生地を重ねたノースリーブワンピースや、ウエストをずらすようにしてレザーの生地を巻き付け、脚にもレザーの切り替えを施した変形パンツなど、意外性のある造形や、境目を曖昧にしたレイヤードが散見された。
古着をリメイクして作られた1点物のショーピースも注目すべきポイントだ。青木は、新しいものを作っては消費する虚しさを感じていたが、過去の時間が蓄積した古着をクリエーションに加えることで、ある種の“健全さ”を感じたという。
古着のトレンチコートを3、4着使って解体し再構築したコートドレスは、風合いのあるブラックレザーとベージュの生地を複雑に切り替えた1着。丸みを帯びた袖のフォルムや、背中をダイナミックに開けたカットワークが、フレキシビリティや、外から定義されないつかみどころの無さを思わせる。
カラーパレットは、ベージュやアイボリーなど、温かみのある色彩がメイン。アイボリーのコーデュロイジャケットは、ざっくり開く襟やたっぷりと生地を使った袖がコンフォートなエレガンスを見せる。タイトなフィットの構築的なニットウェアや、裏仕立てのワンピースも、静かな雰囲気を放ちつつ目を引く。緩やかなベージュのロングコートは、前から見ると直線的なシルエットに見えるが、バックには複数のタックを配置。ぎゅっと布を引き寄せたような、厚みのある質感が印象的だ。