ディオール(DIOR)2020年秋冬ウィメンズコレクションが、フランス・パリにて発表された。
クレール・フォンテーヌ グループとコラボレーションした今季のショー会場は、フェミニストのアーティストをはじめとする作品をモチーフに、女性への力強いメッセージが並ぶ演出が観客を出迎えた。
アーティスティック ディレクターのマリア・グラツィア・キウリが着想を得たのは、彼女がティーンエイジャーだった頃の日記、そして1960年~70年代イタリアのフェミニストアートにおける象徴的な人物たち。コレクションを通して、身体とフェミニズム、そしてフェミニニティの多面的で変わることのない繋がりについて問いかけていく。
始まり合図と共に、ランウェイに顔を出したのは、かつて女性のための“ニュールック”として誕生した「バー」ジャケット。これまでも様々な解釈でアップデートされてきたアイコンウェアだが、今季は細いボウタイ付きシャツにパンツスタイルというマニッシュな着こなしを提案しているのが印象的。メゾン初の女性アーティスティック ディレクターでもあるマリアの新たな女性の物語を予感させる。
またこのボウタイ付シャツは、今季のキールックとしてあらゆる着こなしに登場。中には、モデルの肌を透かせるシアー素材と組み合わせたフェミニンなルックも散見された。本来ネクタイという男性のシンボルであるピースが、女性にエールを贈る新たなアクセサリーとして提案されているようにも感じられる。
ムッシュ ディオールが愛したといわれる“チェック柄”も、今季のコレクションを語る上で欠かせないモチーフだ。ランウェイの上では、オンブレ・チェック、グレン・チェック、ギンガム・チェックといった様々なチェック柄がボックス型ジャケットやフレッシュなミニスカート、ワンピース、ショートパンツといったアイテムの上に登場。また同じくムッシュの愛した“水玉模様”と組み合わせたルックも姿を現している。
そこに交わるのは、マリアの好むシースルーやプリーツを使用したスカートやドレスをはじめ、Tシャツやデニムパンツといっカジュアルウェア。ジレ×パンツに合わせた真っ白なTシャツの上には、今季会場のエントランスを飾ったフェミニストのカルラ・ロンツィ作品モチーフの"I say I"のロゴをプリント。ミニマルなデザインながらも力強いメッセージが放たれていた。
ショーの終盤を飾ったのは、メタリックカラーや、ビジュー、ビーズなど、煌めきをのせたドレス群。踝まで伸びるロングスカートは、フリンジのようにカッティングされていて、モデルたちが闊歩するたびにゆらゆらと揺れ、その輝きも一段とましているようにみえる。堂々と胸を張り、前々と歩みを続けるモデルたちの姿は、これからの明るい女性の未来を描き出しているようにも感じられた。
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