ジバンシィ(Givenchy) 2020年秋冬ウィメンズコレクションが、フランス・パリで発表された。
アーティスティック・ディレクターのクレア・ワイト・ケラーが思い描いたのは、アートシアターのスクリーンに映し出されるヒロインの不完全な美しさを湛えた、銀幕の世界の魅惑。力強い女性のボディランゲージに見え隠れする、センシュアルでミステリアスな魅力を詰め込んだコレクションを展開する。
パワフルなボディランゲージの象徴となるのは、大きく肩をふくらませたパワーショルダー。ゆったりとしたシルエットのマニッシュなジャケットスタイルには、タバコブラウンのケープをぐるりとまいて、より力強い表情に仕上げているのが印象的だ。
本来は寒さを防ぐために、身体を包み込んでくれるケープだが、今季はセンシュアルな一面を引き出す役割を担っているのもポイント。ケープとドッキングしたようなドレスは、胸元までをしっかりとガードすると同時に、ウエストからの華奢なボディラインのコントラストをくっきりと映し出す。さらにバイアスカットのスカートから、長い素足がランウェイへと出ることで、包み隠されていたセンシュアリティが一気に加速していく。
グラフィカル模様を散りばめた躍動感あふれるロングドレスは、太めのベルトをウエストマークすることで、女性らしいシルエットを強調。ラグジュアリーなファーコートから、マニッシュなサルトリアルスタイルに至るまで、今季は華奢なストラップサンダルを足元に差し込むことで、程よい抜け感を演出しているのも特徴だ。
ショーの終盤にかけてランウェイを飾ったのは、クチュリエの繊細なテクニックが光るドレススタイル。華やかなイブニングドレスが登場したかと思えば、テーラリングで再解釈したピースが後へと続いていく。
フェザーのような装飾をあしらったドラマティックなシアードレス×テパードパンツ、煌く銀糸が揺れるジャケットスタイルなどは、本来マニッシュな要素にクチュールが溶け合うことで、思いがけない官能美が描き出されているのが印象的だった。
パレットは、ブラック、ホワイト、 タバコブラウン、カーネリアンといった落ち着いた色彩を基調に。時折差し込まれたチェリーレッドやコバルトといった鮮やかなカラーが、コレクション全体にリズムをもたらしていた。