イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE) 2020年秋冬コレクションが、2020年3月1日(日)にフランス・パリで発表された。新デザイナー近藤悟史によるセカンドシーズンのショーとなる。
会場に設置された真っ白な巨大キャンバスに、ライブアートを行う演出から始まった今季のショー。真っ黒なペンでシンプルな洋服のイラストを絵描きだしたかと思えば、突然その縁取りにそってキャンバスからくり抜きはじめた。
その代わりに現れたのは、先程まで描かれていたイラストと瓜二つとなるワードローブ。ひと繋ぎのニットウェアに、線を引っ張るだけで、ポケットがあるように見せたり、2ピース以上を着ているようにみせかけたユニークな洋服は、アイテムごとの境界線をなくすことを試みた、デザイナーの遊び心を感じられる。
こうしたブランドの根幹となる“一枚の布”へアプローチは、あらゆる手法で行われ、またダウン、ポリエステル、ウール…といった様々な生地ごとに、異なる表情を見せてくれるのも面白い。
例えば通常の2倍以上の丈で仕立てた軽やかなシャツドレスは、本来裾に当たる部分に“ふたつめ”のアームの通し穴を作り、2重に生地を纏っているかのようにみせた。重ねることで生まれた布と布の空間には、モデルが両手を広げるたびに空気を含んでふわりと浮かび、優雅な表情を描き出す。
四角形の布を三角形状に折ったシンプルなドレスには、イッセイ ミヤケらしい細やかなプリーツを施して。まるで“和紙”のような透け感を持つ繊細な表情を持っているが、ダイナミックなダンスを繰り広げるモデル達のパフォーマンから、同時に伸縮性にも富んだ機能的なウェアであることもうかがえる。
ダイナミックなグラフィック模様のアウターは、ショルダーラインもしっかりと幅をとり、よりパワフルな表情へと導く。同柄の2ピース以上の組み合わせが主流で、計算されたアシンメトリーなシルエットが、躍動感も生み出している。
ラストに登場したのは、なんと5アイテム以上のニットウェアを1つに繋げたカラフルでユニークなピース。アームからアームへ、もしくは胴体同士の結合を通して繋がるそれらは、モデル達全員が手をつなぐことで、最終的に1つのピースのように見せる演出が行われた。
“未来への希望を描きたかった”と語る近藤悟史の言葉通り、その姿は、過去・未来・現在を繋ぐポジティブなメッセージのよう。普段はランウェイをすまして闊歩するモデル達も、今日ばかりは満面の笑みで会場をあとにした。