ケンゾー(KENZO)は2021年春夏メンズコレクションを発表した。
今季のケンゾーのインスピレーション源の一つとなったが、“ミツバチ”と“養蜂家”。互いに密接した関係性でありながら、養蜂家は防具服を纏い、ミツバチと一定以上の距離を取る。そんな両者のリレーションに現代の世情を重ね、フェリペ・オリヴェイラ・バプティスタは洋服の上で物語を紡ぐ。
養蜂家の防護服のようなヘッドピースを被ったモデルたちが着るのは、アウトドアやワークシーンの要素を反映した服たちが散見される。ジャケットやシャツには、複数のポケット、ボディと一体化したポーチといった機能性を伺わせるディテールを散りばめている。
デニム素材のファスナーと多重生地で複雑に構築したパンツ、腰に巻きつけたニットアイテムはコレクションの中でもアイキャッチな要素。作業着のエプロンや前掛けを想起させるその様相は、エッジィなスタイリングポイントとして機能する。
そして、今季のコレクションにおけるキーモチーフとなっているのが、滲んだ花模様だ。「世界は泣いている。」と世界の情勢を憂うバティスタは、まるで花が泣いているかようなデジタル加工を施したパターンをコレクションの中で多用した。
それらのパターンから感じるのは、哀愁と強かさ。哀しみを伴っても、美しい色彩は変わらず、服を華やかに彩る。暗い時代の先にある希望や夢、辛い経験を乗り越えることによって得られる成長や強さ。様々なメッセージが込められたモチーフは、ランウェイの上で強い存在感を放っていた。