ジン カトウ(ZIN KATO)の2021年春夏コレクションが、東京・北青山で発表された。
テーマは「再生」。“何かが変わる、そして変えられる”と2020年の変動を見つめ直したデザイナー加藤徹は、約2年ぶりにコレクション制作と向き合った。とにかく作ろう、その一心で始めた製作であったが、作っていく中でテーマが決まり、コレクション発表時には自身まで“再生”する起爆剤になったと話す。
そんなデザイナー加藤の心境の変化を具現化するように、コレクションは黒の世界から多彩な色彩の世界、そして白の世界へと繋ぐ、ストーリー仕立てになっていた。この流れるような色の変化は感情に訴えかけるところがあり、白の世界が終わる頃には、穏やかで開放的な気分が感じられた。
ショーピースは、美しい日本の生地やレースを使って仕上げた繊細なデザイン。クラシックでエレガント、この基軸からぶれることなく、シルエット違いで様々なドレスを展開した。ユニークなのは、パッと見た印象と近くでみた時に感じる印象の変化。
中華刺繍を施した黒のロングコートは、落ち着きのあるように見えたが、近づくほどに、その漆黒の世界から小さな花模様が浮かび上がり、ロマンティックに映る。
メタルプレート付きのレザーベルトを組み合わせたレッドのワンピースも、大胆さや強さを感じられたが、距離が縮まるほどに、内側にもレースがあしらわれていることに気づかされ、繊細なイメージへと変わる。
また、一つ一つのピースに詰め込まれたディテールからは、デザイナー加藤の丁寧な仕事ぶりが感じられた。胸を中心にシンメトリーにあしらわれたカッティング、均衡にスカートから除くレース、格子模様の上にのせた小さな花刺繍など、洋服と過ごす時間が長くなるほどに愛情が深まるような、繊細なディテールが多く見られた。
なお、ショーはギターの生演奏とともに進行。当日の演奏を担当したのは、アーティストのDejima Tatsuyaで、全て彼が作曲したオリジナル楽曲だという。