バレンシアガ(BALENCIAGA)は、21年フォールコレクションを発表した。
21年フォールコレクションは、21年サマープレコレクションを拡張・発展させたコレクション。ランウェイショーはVR形式で行われ、発表されたルックブックではアバターのモデルがコレクションピースを身にまとっている。
また、コレクションと同時にオンライン上で発表された架空のビデオゲーム「Afterworld: The Age of Tomorrow」では、2031年の近未来世界を舞台に、人間の辿る運命と、何年にもわたって着用される“衣服にフォーカス。時の経過や環境の変化を衣服と共に経験すること、永久的に衣服を着用するイメージを、“経年変化”のアイディアで表現した。
ひざが剥き出しになっていたり、穴を補うようにして下に生地を重ねたりしたダメージジーンズや、裾がほつれ所々に穴の開いたニット、ランダムなペイントを施したフーディーなど、“劣化”したかのようなディテールが目を引く。
ベーシックなセットアップは、タイムレスであるばかりかどのような空間でも着られるデザインに。テーラードスーツの素材にはTシャツジャージを採用。ストーンウォッシュ加工を施しストレッチを効かせることで着古したような風合いに仕上げた。また、アイロン不要のシワ加工を施したスーツや、所々灼けたような色味のセットアップなど、既に長い間着用してきたかのような親しみを感じさせるスーツが揃う。
既存の用途や機能のみならず、未来に新たな用途で使用されることを見据えたデザインになっている点も特徴的だ。トレンチコートはいずれパーティードレスとして着用される可能性のため、艶やかなサテンでエレガントに仕立てられた。赤いチェックのブランケットは、フード付きケープやコートとして着られるようになっている。また、マチ付きの大きなポケットをダイナミックに配したパーカーにはストラップがあしらわれており、ダッフルバッグとしても使うことができる。
また、今季のコレクションでは、ファッションを、着用することでファクターやジャッジメントから身を守る一種の“鎧”として解釈。メタルスーツの鎧は、過ぎ去った“過去”を呼び起こすと同時に、はるか遠くの想像を絶する“未来”の展望をも喚起させる象徴として展開された。
同様に、NASAとコラボレーションした、オーバーサイズのパファージャケットは、どこかレトロな宇宙服を彷彿させる。フロントにはポケットを複数配し、アメリカの国旗やNASAのパッチなど象徴的なアイコンをオン。クラシカルな宇宙服のイメージを踏襲したデザインながら、地上でデイリーに着るアウターウェアとしての、新たな可能性を示唆する仕上がりとなっている。
また、ゲームチャンピオンがユニフォームとして着る「PS5(プレイステーション 5)」のロゴを配したフーディーや、爬虫類の表皮のように、あるいは甲冑のようにシルバーのスパンコールをぎっしりと敷き詰めた繊細なピース、緊急事態における救助隊を思わせる蛍光色のジャケットなども登場。いずれも、既存のイメージである“過去”と、新たな可能性を孕んだ“未来”を行き来し、一定の枠組みからの解放の可能性を暗示している。