マックスマーラ(Max Mara) 2021年プレフォールコレクションが発表された。
今季のインスピレーション源となったのは、マックスマーラにとってのミューズでもあるエリザベス・"リー"・ミラー。マグリット、コクトー、ピカソなど、世界の名立たる芸術家たちに影響を与えたアーティストであり、写真家であり、ジャーナリストであると同時に、その類まれなる美貌でモデルとしても活躍した、パワフルな女性である。
しかしそんなミラーの人生は、決して順風満帆なものばかりではなかった。光と影が交差する彼女の人生のシーンが“白黒写真”として残されているように、コレクション全体は“グレー”を基調にしたパレットを採用。また戦場ジャーナリストとしての経験を持つミラーを讃え、“軍服”の機能性をミックスした新生「コンバットテーラード」がコレクションの中心を担う。
今季のムードを色濃く反映させたのは、ブランドのアイコニックなジャケットシリーズ「サルトリアーレ」。通常のジャケットに要する2倍の工程を経て、細部にまで丁寧に仕立てているのが特徴で、グレンチェックやグリザイユをあしらった、今季のシャープなスーツには、軍服を連想させる機能性が備わっている。
例えば、本来フェミニンなミニスカートは、フラップ付きの大きなベーローズポケットをオン。また大き目のボックス型ジャケットには、踝をキュッと絞ったカーゴパンツを組み合わせた。スタイリングのアクセントとなるベルトにも、フロントの両脇にポーチを二つ携えるなど、アクセサリーからもミリタリーな要素を感じさせる。
スタイリッシュなパレットの中で、息をひそめているのは、ややレトロなドット柄。ミレーが好んだというこのモチーフは、グレー×ホワイト、もしくはトーンオントーンの配色で、ジャケットスタイルやブラウスにさりげない遊び心をプラスしている。
また首元で大きなリボンがなびく、ドラマティックなオーガンザブラウスも登場。イメージソースとなったのは、10代のミラーが、モデルとしてのキャリアを本格的にスタートするきっかけとなった一枚の写真だ。この先に自分が背負う使命を、おそらくは何も知らなかったであろうピュアな少女。当時の“it ガール”としてファッション界の頂点に立つミラーの、その輝かしい瞬間は、ファッションというツールを通して、いつまでも生き続けるに違いない。