カズユキ クマガイ(KAZUYUKI KUMAGAI)は、2021-22年秋冬コレクションを発表した。
今季のテーマは「PAUSE」。服をキャンバスに見立てて色彩をのせることで、服に“場(フィールド)”、つまりある種の空間性を描き出すようなイメージを表現。一度立ち止まり、“ファッション”という存在を再認識できるようなクリエーションを追求した。
インスピレーション源となったのは、デイヴィッド・ホックニーやヘレン・フランケンサーラーの絵画作品や、写真表現。色彩を駆使して見る者を包む“場(フィールド)”、空間を形成するカラーフィールド・ペインティングをはじめ、抽象表現主義、ミニマリズムから着想を得てイメージを拡大させた。
絵具が溶け出したかのようなペインティングをあしらった中綿ジャケットは、混ざり合う色彩と規則性の無いタッチ、不均一な余白が印象的な1着。落ち着いた色彩を組み合わせた静かな表情ながら、ベージュのタックパンツ、プレーンなシャツのシンプルなスタイルに確かな余韻を残していく。ブルーやグレーのモヘアセーターは、柔らかなニットの質感によって色と色の境界がより一層曖昧になり、どこか浮遊感のある佇まいを演出する。
また、細かく白が入り混じるチャコールグレーのプルオーバーや、細いブラックのラインがさり気なくアクセントを効かせるレッドのニットカーディガン、あえて布地のすき間から見せるようにサイドラインを配したパンツなど、色彩の微細な変化を落とし込んだピースも散見された。ジッパーを配したシャツにはイエローやレッド、ブルーなど様々な糸を使って刺繍をオン。色を伸ばすようにして垂れ下がる糸が、抽象的なモチーフに動きをもたらしている。
さらりとしなやかなシャツには、全面にグラフィックをプリント。白からピンクへと移ろう色の濃淡を落とし込んだデザインや、光と影をまといながら水面に広がる波紋のグラフィックなど、記憶の中の情景を呼び起こすようなプリントがあしらわれている。
アウターはシルエットに注目したい。地厚なウールコートは、ハリのある質感を生かした立体的なフォルムが魅力。袖にはバックルを施し、かっちりとした要素を加えている。首元でベルトを留めるデザインのジャケットは、緩やかなアーム、裾に向かって上品に広がるシルエットで身体を包み込む。スリムなセンタープレスパンツやアンクル丈のウエストベルトパンツなど、軽快なボトムスと組み合わせることで、その絶妙な分量感やシルエットがより一層際立つ。