アキラナカ(AKIRANAKA) 2021-22年秋冬コレクションが発表された。
着想源となったのは、ブラジルの偉大な建築家 オスカー・ニーマイヤー。1950年代にわずか4年で壮大な建築群を首都・ブラジリアに作り上げた彼は、カサ・カノアスに観られるオーバルのレイヤーや、ニテロイ現代美術館の回廊、コピン・ビルディングのカーブの羅列など、独創的なシェイプへの探求をし続けた人物としても知られている。
今季は、そんな彼の建築が持つレトロフューチャーな空気を、モダンな洋服へと落とし込むアプローチを試みた。日常に馴染みながらも、個人のアイデンティティを引き出すことを意識したピースは、纏うたびにどこか自信を駆り立ててくれる――そんなポジティブなムードに包まれている。
まず目を惹くのは、“ぐねぐね”とうねるようなアームを持つモヘアニット。しばし女性の体躯に着想を得ていたといわれるニーマイヤーの大胆な曲線的表現を、シンボリックに落とし込んだ一着だ。またワインカラーの端正なジャケットも、実は彼のユニークな建築物をイメージソースにしたもの。ボタンを通常よりも上に、ラペルもシャツのように小さくデザインしたことで、重心を上に設定したアーティスティックな建物のシェイプを再現している。
こうした彼が持つ独創的な美意識は、時にシェイプとしてだけでなく、異素材を使用したアプローチで洋服へと落とし込まれているのも印象的だ。ある時は天然ウール×ニットのドッキングで、自然×人口物が行きかうニーマイヤーの自宅をイメージ。また重量感のある建築に着想したピースは、分厚いパイルに軽いシフォンを組み合わせることで、ボリューミーな表情を引き立てている。
日常に溶け込むリアルクローズには、さりげないフェミニティを加えて。コクーンシルエットのジャケットには、アームから繋がるリブを“くしゃくしゃ”と収縮させたクチュール的表現をプラス。またパディング生地を使用した、ややオーバーサイズのブラウス風のジャケットは、ふんわりと柔らかなシルエットに仕上げたほか、見た目以上に軽量であたたかい、機能性も備えている。
カラーパレットは、秋冬らしい落ち着いたベーシックカラーと共に、ニーマイヤーの建築に着想した原色をミックス。トップスに走る大胆なボーダー柄は、ライン一つ一つが浮き出ているような構築的な表情で登場する。