自身のキャリアの中で困難に直面した経験はありますか。
実を言うと私は、14歳でバックパックを作り始めてから今日まで、困難を困難と感じたことは一度もありません。困難はいつだって冒険の中に潜んでいる。そしてそうした冒険は、私にとってはある種エキサイティングなものだからです。ビジネスは難しいものではない。ただ挑戦の連続であるというだけです。そして非常におもしろく、やりがいがある、特に私の場合にはね。例えば私は、自分の製品をテストするためにキャンプに行ったり、山に登ったりします。でもこれだってビジネスの一貫です。楽しそうでしょう。
なるほど、確かにそれは楽しんで仕事ができそうですね。
ファッション業界というのは、非常に波がある業界ですよね。景気にとても左右される。しかしアウトドア用品の業界というのは、こうした浮き沈みがない。なぜだかわかりますか。不況になって仕事がなくなれば、人々はキャンプや海に行くからです。仕事が無い時には、大自然の中でゆっくりするのが1番、だから私のビジネスはいつだって下を向くことはないんです。
つまりね、大事なのは自分がどういう“選択”をするかということです。例えば私は、この業界でビジネスをやっていくことを選択しました。それから、43年前になりますが、妻との結婚を選択しました。自身の選択がその人の人生を決める。だから私は娘達にもその大切さをいつでも伝えています。ライフプランや、お付き合いする相手。どれもみな非常に重要だからこそ、慎重に選ばなければならない。
結局私の人生の成功の秘訣は、いつでも最高の選択をしてきたというところにあるのだと思います。それからもう一つ、ビジネスの成功の秘訣ですね。それは私が、お客様に対していつも、自分が客ならこういう風に接してもらいたいと思えるような態度で接してきたことです。これを心がけている限り、ビジネスはいつだって良い方向に動いていきます。
インタビューは穏やかなムードで終わった。時折冗談を交えながらも、終始優しい笑顔で質問に応じてくれたウェイン。そこからは、本当に人生を楽しんで過ごしている人だけがもつ余裕、そして自分のビジネスに対する自信が感じられた。ウェインの製品に対する愛着と、彼の顧客と真摯に向き合おうとする姿勢。グレゴリーが創業から30年以上たった今でも多くの人に愛される理由は、そこにあるのかもしれない。
会場には、2014年春夏の新作の一部や、グレゴリーの歴代のバックパックが展示されていた。その中には「デイアンドハーフパック」の初期モデルも。古着屋から借りてきたもので、10万円以上するという。どのモデルも、[バックパックを「背負う」のではなく「着る」]というブランドコンセプトの通り、デザイン性が高く、カラフルなものばかり。1977年の創業から今日まで、パック開発でフィット感、耐久性、機能性を追求し続けてきたグレゴリー。そのグレゴリーがこれから、さらにどのように進化し、背負う者を驚かせてくれるのか、期待が集まる。