ディオール(Dior)2014年クルーズコレクションは、クチュール感にスポーティな要素を取り入れ、まさに「クルーズ」らしさをストレートにかつ暗示的に表現したコレクションとなった。本コレクションは、ラフ・シモンズがアーティスティック・ディレクターとして初めて手がけるクルーズコレクションでもある。
ショー会場はモナコ・モンテカルロの海岸に設けられ、海をバックに滑るようにモデルたちがウォーキングする様は神秘的。フロントローにはアルベール大公とシャルレーヌ公妃も姿を現した。
最も注目されるのは、初めて「レース」を使うことにチャレンジした、ラフ・シモンズの素材への挑戦。決して単にエレガント、クラシカルだけではない、新しい表現方法は想像を超えたもの。ラフ・シモンズ自身、「このコレクションで特に力を入れたのはレースとエネルギーです」と語る。光沢や楽しげな色彩感覚によって、軽やかでモダンなものへと進化した。またもうひとつのキーワードである「エネルギー」は、光と色を巧みに操ることで表現されている。
カラーは太陽のオレンジや、海の青のグラデーションが、自然から生まれたインスピレーションを鮮烈に描き出す。そしてスポーティ感のあるメタリックな輝きのアクセサリー、水面を思わせる流れるような光沢のシルクは、涼しげな印象。またコレクション全体を通して見られる、直線的に描かれたチューリップのグラフィックが、アートフルな印象だ。パンツの片側はたっぷりとプリーツの入ったワイドシルエットに、もう片方はすっきりとしたクロップトといったアシンメトリーなバランスは、彼の得意とするところ。
スポーティな要素としてはドレスのセンターに大胆に配されたジップ、透けるドレスの下に重ねられたビーチウェアなどが挙げられる。ディオールのアトリエによる最高の手仕事とラフ・シモンズの感性が生み出した、最高のカジュアル・リゾートスタイルだ。