キディル(KIDILL)の2022年春夏コレクションが東京・草月会館にて披露された。なお、今季はパリファッションウィークオンラインプラットフォームにて発表している。
今シーズンは、イギリスを拠点とするアーティスト、トレヴァー・ブラウンの作品からインスピレーションを得た。残酷なほどに“純粋性”と“狂気性”が混在し、相反する要素が犇めきあう彼のアートワークは、時に理解が及ばない領域に足を踏み入れる。そんな世界観に魅了されたデザイナーの末安弘明が、今季は甘美と過激が共存するキディルの世界をつくりあげた。
末安は、トレヴァーとの対話の中で、自分の欲望に純粋であること、純粋すぎることはある意味で狂気ではないかと考えた。そしてその狂気じみた探究の先には洗練された澄み切った世界が待っているのではないかと。“純粋性”は、キディルがブランドの根底に掲げてきたものでもあるからこそ、トレヴァー作品への共鳴は深いものだったのだろう。
トレヴァーの作品群は、今季を飾る大事な要素となり、彼の作品世界を彷彿とさせる二項対立の表現は、コレクションがもつエネルギーを膨らませた。キッチュな総柄プリントのセットアップには、フリルとリボンを巡らせ、かわいらしさの象徴とも言えるフラワーパターンは、“切り刻んだ”ディテールやグランジなデニムを組み合わせている。
過激なディテールのひとつとしてロープを使ったスタイリングが挙げられるが、これは、ロープアーティストであるHajime Kinokoがプロデュースしたもの。固定概念的なエロチシズムではなくアーティスティックでクリエイティブな意思表示として採用された。
ボンテージベルトやハーネスなどと同じく“呪縛”を連想させるものである一方、これらが漂わせる過激でアグレッシブなムードは芸術性を高める“純粋性のあるもの”として多用している。また、ルルムウ(rurumu:)とのコラボレーションニットは、まるでロープを絡めたような大胆な穴の開いた構造で内側をあらわにし、呪縛と解放の両方を感じさせた。