JW アンダーソン(JW Anderson) 2022年春夏コレクションが発表された。ルック撮影は、今季で3度目のタッグを組むドイツ出身の写真家 ユルゲン・テラーが行った。
目に飛び込んでくるのは、春夏のムードを高めるカラフルなカラー。イエロー、レッド、ブルー、グリーンなど、鮮やかな原色を自由なスピリットで組み合わせているのが特徴で、複数のカラーをミックスしたボーダー柄のトップスや、ブランドのイニシャル「JWA」を鮮やかな編地で表現したニットウェアなどが、コレクションに楽し気な彩りをもたらしている。
またコレクションの主役を担う、キッチュな苺モチーフの存在も忘れてはいけない。従来のフェミニンかつ愛らしいモチーフとしての役割は持たず、毒々しく熟れたレッドから、グリーンやブルーに“変色”しているものまで、様々なカラーを纏った苺たちが、ニットやフリース、コットンなど様々なテキスタイルの上に登場する。
ある時は、ラフなフリースのセットアップの総柄として、またある時はスタイリッシュなラインを持つニット×パンツのポイントに。全く同じ苺のモチーフでありながら、“ドレスアップ”も“ドレスダウン”もできる、異なる意味を持ち合わせているようだ。
まるでベッドルームで、自分だけのドレスアップを楽しむように、今季はどこかリラクシングなムードが漂っているのも特徴だ。中でもひときわ目を惹いたのは、まるでピローをベルトで結びつけたかのようなユニークなルック。ボリューミーな素材を活かして“キュッ”とウエストを絞った、どこかドレッシーな表情が実に面白い。
ブランドで人気を集めるアクセサリーにも、新作がラインナップ。オーバーサイズのゴールドチェーンがポイントの「チェーン ローファー(Chain Loafer)」には、今季らしいカラフルな新色が仲間入りしたほか、ゴールドチェーンをボリューミーなレザーで覆った新作サンダルも登場。さらに新作バッグには、煌めくチェーンをあしらったポシェットが、多彩なパレットを揃えて展開されている。
コレクション発表後、JW アンダーソンを手掛けるデザイナー ジョナサン・アンダーソンにインタビューを実施。今季のインスピレーション源から、彼が同じくクリエイティブ・ディレクターを務めるロエベ(LOEWE)の両立まで、幅広く話を伺うことができた。
今季のコレクションの出発地点について教えてください。
北アイルランドで育った、僕自身の子供時代に着想しました。当時は学校で撮ったひとりひとりの写真を、独立した厚紙制のフォトフレームに飾ったりなんかして。その時の懐かしい記憶を思い出した僕は、今季お配りしたルックも、厚紙のフォトフレームに入れた“スクール風”に仕上げるアイディアを閃いたのです。
そして洋服のデザインは、ノーマルでありながら自己表現ができるもの、そして“それ”を着てどこかに出かけたくなるようなものを作りたいと思いました。
そこには、少しカラフルさを加えるのと同時に、本能を感じさせる、ややセクシャルなテンションも含んでいるようなイメージで。<グッドテイスト>と<バッドテイスト>を共存させたコレクションを作ろうと思ったんです。
バッドテイスト”というのは、具体的に言いますと…?
今季のキーモチーフとなった<苺柄>が、まさにそうですね。このモチーフは、僕が見つけたとある絵から思いついたものなんですけど。それは、“苺のボウルの近くで、どんぐりを食べているリス”を描いた18世紀の絵画で、僕はその絵から苺柄が連なるような、ちょっぴり悪趣味な壁紙を想像したのです。
そしてさらに、そのモチーフを抽象的に表現した結果が、このキッチュな苺柄になったというわけ。苺柄を衣服に落とし込んだ時、纏う人次第でドレスアップすることも、ドレスダウンすることもできるのも面白いでしょ?苺というコードが、洋服に遊びを加える要素となっています。