サルバム(sulvam)の2022年春夏コレクションが発表された。

均整の波打ち際で

「均整」というものがある。完璧な比例、心地よい対称性、なめらかな肌理、あるいは調和した色彩......均整のリストには、なるほどそういった要素を際限なく(？)挙げられそうだ。そして均整はささやかなことでも崩れうる。その静かな不均衡は、均整との波打ち際に絶えず揺らめいてやまない。

揺らめく水面のごとく

今季のサルバムは、さながら「均整」の波打ち際のようである。チェスターコートは軽やかな生地感であり、風に揺らめくそのさまは文字通りに波打つ水面を思わせよう。また、スーツもブラックの洗練された佇まいながら、シャープな身頃とポケットにより絶妙なアシンメトリーがもたらされている。

ステッチのひと筋

ほんのひと筋の線でさえ、均整を破りうる。やはり上品なテーラリングを基調としたストライプのスーツやロングジャケット、スカート、チェスターコートなどには、心地よいネイビーと倍音を奏でるかのようにパイピングを配して。ジャケットのフロントやパンツのサイドでは縦のラインが強調されるが、右腕のみに施せば、どれだけささやかなディテールであれど、その非対称性が全体に自由な運動をもたらしている。

衝突の緊張感

互いに異なる模様やテキスタイルもまた、波打ち際をなす。左右で異なるトーンを採用した総柄シャツやライトコート、上下で大胆に表情の異なる柄をのせたドレス、そしてシアーな素材を挟んだワンピース。いずれも色彩の主張は抑えながらも、それだけに異なる要素が衝突するその緊張感が際立つ。

裂け目の響き

そしてその緊張感が極度に達するのが、裂け目ではなかろうか。ホワイトのジャケットは、生成途中のパターンが痕跡を残すかのように、衣服のパーツが揺らめき、スリーブには裂け目が開く。エレガントなシャツでも、ショルダーに、そしてバックには大胆なスリットがあしらわれる。そしてミニマルなシルエットのワンピースは、サイドを大胆にカットし、素肌を覗かせている。

レイヤーの運動

アシンメトリーが表層における不均衡をもたらすのならば、他方で透け感はレイヤーの上と下とが織りなすドラスティックな運動を表現する。編まない部分を残してそれ自体が流動的な表情を生んでいるニットは、大胆に素肌を透かして見せる。また、シアーな総柄生地はロング丈のコートなどに採用、幾層とレイヤーを織りなし、渦巻くような奥行きを生んでいる。