2013年9月26日(木)、リック オウエンス(Rick Owens)が2014年春夏コレクションをパリファッションウイークにて発表した。
ランウェイの背景に見える、二股に分かれた階段。軍隊の行進か、どこかの部族が祭儀の際に用いる踊りのような動きの揃った振りに合わせて次々と女性たちが降りてくる。これはルックが登場する前のパフォーマンスか?いや、そもそも彼女たちは誰なのか?会場を興奮の入り混じった混乱が襲う。
パフォーマンスを見せてくれたダンサーたちは、米大学のステップダンスチームのガールズ。ブロンドヘアに妖精のようなルックスの、いわゆる"ランウェイモデル"とは似ても似つかない彼女たちだが、みなぎるエネルギーとその自尊心には、別の次元での美しさが宿っている。服の色ごとに4つのチームに分けられ、険しい目つきで熱のこもった迫力のダンスを披露してくれた。ラストは、一人一人フォトグラファーたちに喧嘩を売るように、ガンを飛ばしてポージング。(最後の最後でやっと大人しく止まってくれたのだから、写真を撮る側としては、さぞ安心したことだろう)
リックオウエンスの代名詞ともいえるドレープはデザイン性はもちろん、動きやすさも兼ね備えていると判明。日常でもタイトなものだと動きづらさを感じるレザージャケットは、異素材の切り替えを用いてちゃんと腕を上げられるデザインに。日本の忍者や、空手か柔道の胴着のエッセンスを香らせるアイテムも、ちらほらと登場する。そして注目すべきは、彼女たちの多くがスカートまたはスカートライクなパンツを着用しているということ。ボディが強調されるフィット感や、ポンポンなどの女性らしいシルエットやディデールも見て取れる。ホワイトのセクションのドレスについた、構築的な首回りのデザインも繊細さを帯びている。
足元は、12月に発売を控える話題のアディダスとのコラボシューズ。「実用的なデザイン」という観点から製作されており、このショーはその抜群の機能性を証明する良い機会となったに違いない。
リックオウエンス 2014年春夏メンズコレクションに引き続き、サプライジングな演出で魅せてくれたリック。しかし、単なるエンターテイメント性への追求が今回の結果に結びついたのではないだろう。今季提案する、モードと機能性を合わせ持った服は、彼女たちのようなモデルだからこそ最高のプレゼンができるのだ。また、ここまで会場の全視線を引き付けるほど圧倒的だと、「パフォーマンスばかりで服に注意が及ばない」といった指摘をする余地すら与えない。