ヨシオクボ(yoshiokubo)の2022年秋冬コレクションが発表された。
今季のヨシオクボのテーマは「IKAnobori(いか上り)」、つまり凧(たこ)のことである。そこには、凧揚げはもちろん、メンコやけん玉など、消えゆきつつある日本の文化に目を向けるという意識があったという。と、同時に、骨組みを作って風を受ける何がしかの膜を張るという構造は、スポーツカイトにも見られる。今季のコレクションでは、スポーツカイトがもつ鮮やかなカラーリングやフレーム構造など、ブランドのデザインと通底する要素を抽出し、スポーティなムードへと昇華した。
基調にあるのは、切り替えや素材のレイヤリングを駆使しつつ、オーバーなサイズ感でまとめられたスポーツスタイルだろう。今季はそれを、凧を構造付ける骨組みの要素を取り入れ、立体的なフォルムを生みだす。たとえば、放射状にしなやかなフレームを施したアイテムは、スカートのように広がり、立体的なレイヤー構造をもたらしている。
また、薄手の素材の分量をふんだんにとり、ゆったりとロング丈に仕上げたスポーティなアウターは、内側にフープ状の構造を取り入れ、大きく広がるドレスのようなシルエットに仕上げた。フレームを使用し、身体の輪郭から離れたシルエットを描く衣服というと、18世紀のクリノリンや19世紀のバッスルなどが思い浮かぶ。和の文化に着想を求めていたところ、意外なところで西洋の服飾の伝統と邂逅があったといったところであろう。
加えて、随所にあしらわれた凧の尻尾を彷彿とさせるリボンも印象的な装飾だ。尻尾は通常、凧に安定性を付与するものであるが、ここでは歩みに合わせて軽快に揺らめく、動的なアクセントを強調するものとなっている。
ディテールでは、ドローストリングによるギャザーも随所に用いられている。ベストのウェストに施せば、きゅっとシルエットを引き締める。ゆったりとしたロングシャツは、ジレ状に切り替えたフロント部分に沿わせるように、ギャザーをドレッシーに寄せて。あるいはブルゾンのバックには、ウェッジ状にギャザーを施し、平坦になりがちなバックスタイルに豊かな表情を与えた。
立体的な構造ばかりではく、平面の柄においても、和の文化的モチーフを取り入れている。ブルゾンのバックには、龍の柄を大胆に配置。レイヤーとドレープが引き立つスカートやフーディなどには、花札の柄を図案化したパターンで華やぎを。また、ノースリーブのロングトップスや、ボア素材と切り替えたブルゾンなどには、スポーツカイトのスポーティな配色を用い、近未来的なムードを漂わせた。