イレニサ(IRENISA) 2022-23年秋冬コレクションが発表された。
2020-21年秋冬コレクションのデビュー以来、スタンダードなベーシックカラーが基調のメンズウェアを展開してきたイレニサ。そんなブランドのコレクションに今季突如として差し込まれたのは、燃えるように鮮やかな朱色だ。神社の鳥居の色としても知られるこの特別なパレットは、私たち日本人にとっても本来馴染み深い色なのかもしれない。その証拠にコレクションの中では、アクセントであると同時に、日常に溶け込むような両極の要素を内包しているようにも感じられる。
主にシャツとして登場した朱色のトップスは、秋冬らしいシックなダークカラーのレイヤードスタイルと共に提案される。ジャケットを羽織ったシンプルなスタイリングもあれば、グレーのシャツのポイントとして、首元に差し込んでみたり、朱色のニットウェアをさらに重ねてみたりと、それぞれの個性を引き出すコーディネートを楽しんでいるようだ。
どんなにダークトーンに囲まれていても、そこに"奇抜さ”はなく、むしろ上品な空気を感じられるほど。全身をブラウンで統一したルックは、ひとさじの朱色が加わることで、全体像をより一層引き立てて、ロングコートが持つ落ち感や端正なシルエットのパンツなど、洋服ひとつひとつが持つ表情を浮き彫りにしていく。
秋冬らしく今季はアウター群も豊富。テーラリングが美しいシングルジャケット、大きなラペルを持つチェスターコート、ロング丈のユニークなベスト、オーバーサイズに仕上げたブルゾンなど、様々なテイストのアウターがランウェイを交差する。
また今季はダッフルコートこそ存在しないものの、その象徴的な“トグル”を使用したディテールが散見されたのも印象的だった。中でも目を惹いたのは、Vネックから布を繋ぎ合わせたような、独特な前合わせを持つルック。その首元に生まれた構築的なフォルムのトラペーズ・ネックに対して、あえてトグルの向きをバラバラにしたシニカルな表情がユニークだった。