コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)の2022年秋冬コレクションが、2022年1月17日(月)、東京・南青山にて発表された。
「ノマド(nomad)」──遊牧民、あるいは放浪者の謂いである──とは、今季のコム デ ギャルソン・オム プリュスのテーマである。集団に属さず、人と群れることもなく、自由に生きるノマド──ではこの時、何者にも縛られぬその拠りどころとなるのは何であろうか。たぶんそのひとつが、この身体というもの──皮膚という境界に縁取られているが、その下層に豊かな柔らかさを孕んでいる──にほかならないであろう。
確固たる身体の境界であろう皮膚の確かさを映しだすかのように、アウターは重厚な質感と確かなフォルムで仕上げられている。厚みのあるツイードのチェスターコートをはじめとするクラシカルなロングコートはその好例だ。温かみのある雰囲気を基調としつつも、その上にブルーとレッドで格子柄が描かれているのは、自由さの中にある種の秩序をもたらそうかとしているかのように思われる。
皮膚の下層に柔らかな肉体があるように、重厚なアウターの下に重ねたジャケットやロングシャツ、カットソーなどは、テーラリングの端正さから湧き出るような可塑性を示している。コートやジャケットは、サイドに大胆なホールを設け、下層に重ねたウェアの柔らかさを予告する。カットソーは、フロントにたっぷりと布の分量を取ることで、ドレープの柔らかなフォルムを描く。サイズを極端に拡大したかのようなプルオーバーやフーディは、しっかりとした素材の質感とそれを身にまとう身体のフォルムとが拮抗し、大胆に隆起するシルエットを生みだした。
素材の肌理もまた、柔らか──メタファーとして──だ。ジャケットに見られる、経年変化を経たような縮絨素材の質感やほつれたようなディテールは、「ノマド」のテーマを直接的に彷彿とさせる。ジャケットのセットアップは、素材をシュリンクさせたような襞が、豊かな手触りを示す。あるいは、繊細に波打つフリンジやフリル、艶やかな光沢を帯びたファー調素材など、いわば肌理を愛でるフェティッシュとでもいうべき多様なテクスチャーが見受けられる。
そうした、確かさと柔らかさがともに交わりつつ生み出すこの身体を拠りどころに、ノマドは自由に駆ける。その足取りは軽やかだ。ロングコートは豊かに広がるAラインを描き、その裾にはヴィヴィッドな色彩の素材で切り替えを施して。また、ハーフ丈のワイドパンツや、ギャザーを寄せてほのかな甘さを漂わせたシャツワンピースなど、軽快な雰囲気でまとめられたこれらのアイテムには、レッドやグリーンといった鮮やかな色彩により溌剌としたムードをプラスした。
シューズも、そうした重厚さと軽快さの両極性を反映するかのようだ。ナイキ(NIKE)とのコラボレーションシューズは、「ナイキ エア マックス 97(NKE AIR MAX 97)」の構造はそのままに、二層構造のディストレス用レザーを採用。一方でジョージコックス(GEORGE COX)、ジョン ムーア(John Moore)とのトリプルコラボレーションによるレザーシューズは、ダブルストラップサンダルとオックスフォードシューズの要素を融合させ、厚底ソールで仕上げた。