ディオール(DIOR)は、サマー 2023 メンズ コレクションを発表した。

クリスチャン・ディオールと画家ダンカン・グラント

今季は、メゾン創設75周年に際しクリスチャン・ディオールを見つめ直した前シーズン、ウィンター 2022-2023 メンズ コレクションに始まった対話の延長線上に位置するコレクション。クリスチャン・ディオールのレガシーへと目を向けるのに加え、今季はもう1人、知識人・芸術家のグループ「ブルームズベリー グループ」の一員である画家ダンカン・グラントからも着想を得ている。

フランス・ノルマンディ地方のグランヴィルを故郷に持つクリスチャン・ディオールと、イングランド・サセックスのチャールストンにて田舎暮らしをしていたダンカン・グラント。気候のよく似たそれぞれの土地において、庭園や住まい、周囲の環境といった要素が、両者の創作に大きな影響をもたらした。ごく私的な空間からパブリックな表現へと変化を遂げ、歴史の一部として現在、未来に至るまで共有されていく“時間的要素”、そして、実用性や移ろいゆく自然といった“空間的要素”がコレクションに落とし込まれている。

柔らかなカラーパレットや自然を思わせるモチーフ

陽の光を受け柔らかに色づく自然の色彩が、カラーパレットに反映されている。花々を思わせる温かみを含んだピンクのセットアップやジャケット、「ディオール グレー」のコート、フレッシュなブルーのブラウス、淡いグリーンのブルゾンなど、上品でありながらものびのびとした開放感を感じるカラーに彩られたピースが揃う。

加えて、野花の刺繍を散りばめたフリースボアジャケットやトートバッグ、メッシュポケットに可憐な花を散りばめたアノラック、ウォーミングな風合いのチェックジャカードショーツなど、アウトドアやガーデニングを彷彿させるデザインも目を引いた。

リュクスで実用的な装い

また、リュクスな佇まいと実用性、フォーマルとカジュアルといった対照的な要素を組み合わせ、優雅で軽快なスタイルを提示していたのも印象的だ。半透明のシルクオーガンザで仕立てた「バー」ジャケットには、極端に丈の短いショートパンツを合わせ、ショート丈のレギンス、スニーカーとコーディネート。

光沢感を備えたスウィーピングコットンのダスターコートやアイコニックな「カナージュ」のキルティングには、リフレくティブなテクニカル素材のベストとウエストバンドを折り返したテーラードショーツ、ラバーブーツを合わせ、ジェントルなアクティブスタイルを描き出している。

ダンカン・グラントのアートを配したトップスやハンドニット

コレクションに叙情的なアクセントを加えるのが、ダンカン・グラントのアートワークだ。艶やかなテクニカル素材のトップスには《LILY POND SCREEN(C.1913)》のグラフィックを配し、躍動感をプラス。曖昧な輪郭線で描かれたダンカン・グラントのスケッチを落としたハンドニットは、庭園を照らす穏やかな日差しを彷彿させた。

アウトドアブランド・ミステリーランチとコラボ

アウトドアブランドのミステリーランチ(MYSTERY RANCH)とコラボレーションした「サドル」バッグやリュックサック、ベルトバッグにも注目だ。リュックサックには取り外し可能な撥水カバーとフードを備え、「サドル」バッグには細かい仕切りを施すことで実用性を高めている。