「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台」展が、東京都現代美術館にて、2022年11月12日(土)から2023年2月19日(日)まで開催される。
ウェンデリン・ファン・オルデンボルフは、1962年オランダ・ロッテルダム生まれ、ベルリン在住のアーティストだ。2017年ヴェネチア・ビエンナーレのオランダ館代表を務めるなど、オランダの現代美術を代表するアーティストのひとりであり、20年以上にわたって映像作品や映像インスタレーションを手がけてきた。
ファン・オルデンボルフの映像制作の特徴は、あらかじめシナリオを設定せず、キャストやクルーといった他者との共同作業を通して状況の設定や人びとの関係を組み立ててゆく点だ。その作品には、撮影の場という状況設定のもと、人びとがあるテーマについて対話する過程であらわになる主観性や視座、関係性が捉えられている。
日本初となるファン・オルデンボルフの個展「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台」では、代表的な映像作品から新作まで6点を紹介。ファン・オルデンボルフは、社会における支配的な言説やイメージからいかに逃れるのか、展示空間の構成においても繰り返し考えてきた。本展も、フレームを定めることのない舞台セットのようなインスタレーションとして構成される。
ファン・オルデンボルフの映像の重要な要素に、ある場所の歴史的文脈に、互いに異なるバックグラウンドや専門を持つ人びとの声が重なることで生まれる、豊かな多声性がある。たとえば、初期作品の《マウリッツ・スクリプト》は、17世紀のオランダ領ブラジルで総督を務めたヨハン・マウリッツの知られざる統治をめぐって、彼の手紙を読み上げながら議論が進行するものであり、その撮影はマウリッツの旧居でもあるマウリッツハイス美術館を舞台に、アーティストをはじめさまざまな人びとが参加する公開撮影として行われたのだった。
ファン・オルデンボルフの映像には、音楽、映画、詩、建築、あるいは絵画といった芸術実践や、その歴史もしばしば取り上げられる。2019年に制作された《ふたつの石》は、ともに1930年代初期にソビエト連邦で活動し、戦後オランダで活躍したドイツ人建築家ロッテ・スタム=ベーゼと、ロッテルダムの差別的な住宅政策を批判したガイアナ出身の活動家エルミナ・フイスワイド、ふたりの軌跡をたどる作品。同作は、スタム=ベーゼが計画に携わったハルキウ・トラクター工場(KhTZ)の集合住宅地とロッテルダムで撮影されており、それぞれの地で活動する建築家や住民による議論が展開されている。
ファン・オルデンボルフはその作品において、ジェンダーの問題についてもさまざまな角度から扱ってきた。本展でも、オランダで音楽活動や文筆活動を行う若い女性たちが、自らの異種混交的なルーツや性についての表現を繊細に紡いでゆく《Hier. /ヒア》や、ポーランドの映画産業に携わる女性たちがジェンダー不平等の問題とこれからの希望について、率直な言葉を交わしあう《obsada/オブサダ》を紹介する。
さらに、本展では、東京で制作した新作も発表。主に1920〜40年代にかけて活躍した女性の文筆家たちが、女性の社会的地位や性愛、戦争などの問題を扱った文章に着目し、それらが現代社会のいかなる側面を反映するのかを探る。
企画展「ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台」
会期:2022年11月12日(土)〜2023年2月19日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 3階
住所:東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
開館時間:10:00〜18:00(展示室入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(1月2日(月・振替休日)・9日(月・祝)は開館)、12月28日(水)〜1月1日(日・祝)、10日(火)
観覧料:一般 1,300円、大学生・専門学校生・65歳以上 900円、中高生 500円、小学生以下 無料
※本展チケットで「MOTコレクション」も観覧可
※「ウェルカムバック券」を導入(購入したチケットで1回かぎり再入場が可能な「ウェルカムバック券」を用意。希望する際は展示室出口のスタッフに申し出のこと)
※開催内容は都合により変更となる場合あり
■同時期開催
・企画展「クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ」
会期:2022年12月21日(水)〜2023年5月28日(日)
・ コレクション展「MOTコレクション」
会期:2022年11月3日(木・祝)〜2023年2月19日(日)
【問い合わせ先】
TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)