アキコアオキ(AKIKOAOKI)の2023年秋冬コレクションが、2023年3月16日(木)、東京・渋谷のヒカリエホールにて発表された。
今季のアキコアオキのキーワードとなったのが、「マリア」、聖母マリアの謂いである。長いキリスト教信仰のなか育まれてきた、人びとに寄り添う姿、あるいは突如イエスを身籠ることになり、「聖母」としての役割を逃れ難く受け入れることになったその宿命的な態度という、いわばマリアの抽象的な位相をコレクションに反映させることを試みたという。
コレクションの軸となるのは、アキコアオキが得意とするユニフォームウェアだ。それはテーラリングであり、ミリタリーであり、あるいはスポーティである。たとえばテーラリングおいては、フォーマルなストライプ柄のスーツ地を多用しつつも、それらをソリッドに仕立てるのではなく、解体・再構築的にショートジャケットやドレスへと仕上げている。また、コルセットを彷彿とさせるバックストラップを組み入れるなど、服飾史への目配せも感じさせる。
解体・再構築的な手法は、コレクションに幅広く見られる。古着を用いたドレスもそのひとつだ。身体のシルエットに沿ったドレスには、プリントを施した古着を解体して使用しており、ドレスの華やぎがカジュアルさとスポーティさに屈折させられている。上述のテーラリングにも見られるように、ここにはいわばドレッシーの解体、フォーマルを日常へと溶け込ませてゆくというベクトルを見てとることができるだろう。
聖母マリアが、突如聖母という位置を身に負うことになったという視点を反映して、ウェアには身体を束縛するという要素を随所に見てとることができる。その例として、フレアシルエットに仕上げたボンテージパンツや、両腕をベルトで拘束したコートなどを挙げることができる。
カラーは、テーラードウェアを彷彿とさせるブラックやグレーを軸に、ブルーやライトピンクなどで彩りをプラス。また、素材においても、シンプルなフォルムのドレスに用いたレース、光沢を帯びたロングコートのビニール素材、ファー様の素材など、多様なテイストに合わせてさまざま質感を溶け込ませた。