ミキオサカベ(MIKIOSAKABE)の2023年秋冬コレクションが、2023年4月14日(金)、東京のウェスレアン・ホーリネス教団 淀橋教会にて発表された。
テーラリングやシャツ、ドレス──これらいわばフォーマルな装いを、シルエットにより、素材により、あるいはディテールにより、その形式性を下降させることが、今季のミキオサカベにおいては試みられているように思われる。
たとえばテーラードジャケットやドレスシャツは、上品なフォルムを踏襲しつつ、ショルダーを力強く仕上げるとともに、スリーブは腕のサイズを超えた大胆な長さに。丈感も長く設定し、力強くも気怠いシルエットに仕上げられている。
また、ジャケットにおいては、端正な素材を基調とはしつつも、ショルダー周りやヨーク部分を起毛感のあるテクスチャーへと切り替え、上品さを脱臼。また、ワイドシルエットのスラックスとともに、縦方向に大胆なスリットを設け、テーラーリングのソリッドな表情を切り裂いて動きのある表情と多層性をもたらした。
いま一度シルエットに戻るならば、全体として縦のラインを意識しつつも、重心を上方に据えることで、どこか不安定な印象をもたらしている。たとえばアウターにはボリューミーなパッファージャケットを着用しつつ、ボトムスはきわめてタイトなレギンスで些かのフェティシズムを掻き立て、さらに足元にはグラウンズ(grounds)とのコラボレーションによる量感あふれるシューズを合わせるなどは、その代表的な例だろう。
一方、フリル咲き乱れ、パフスリーブは甘く、スカートはふわりと広がるドレスは、メタリックな光沢を帯びた軽快なファブリックや、スパンコールが一面にきらめく素材を採用することで、フォルム以上に表層における華やぎが引き立てられる。あるいは、ミニ丈のオフショルダードレスでは、快活なシルエットはそのままに、ビニール素材を用いることで、ある種シニカルな様相を示しているといえる。