マイケル・コース(MICHAEL KORS)の2025-26年秋冬コレクションが、アメリカ・ニューヨークにて発表された。テーマは「Dégagé chic(洗練された上品さ)」だ。
今季のマイケル・コースは一貫してミニマルかつエレガントだ。それはカラーパレットからまず読み取れ、グレー、ブラック、ホワイト、チョコレートブラウン、ベージュが大半を占めており、総じてワントーンのスタイリング。時折りくすんだグリーンやパープルも登場するが、それも1つの色彩のみでルックが完成している。
特筆すべきは、マニッシュなスタイリングの中の絶妙な抜き差しによって、秀でたエレガンスを構成していること。例えば、ざっくりガウンのように着たレザーのトレンチコート、ブラレットの上にロング&リーンなシャツを重ねたスリーピースのパンツスーツ、ボックスシルエットのジャケットの腰位置をベルトで締めたセットアップなど。アシンメトリーに仕上げたツイードジャケットは、視点がずれることによってウエストラインが強調され、女性らしさを叶えている。
動きのあるディテールと肌の魅せ方は、どれをとっても印象的で、洗練されたリラクシングなムードへと転換されている。ミモレ丈のスカートはランダムな裾のライン、ブラックドレスは大きく開いたスリットによって、思わず視線を奪う揺めきを実現した。タックパンツはワイドでなめらかなテクスチャーだから、歩けば肌を伝うように波打つ。随所に見られたベルトと紐のディテールは、あえて垂らすことによって縦のラインと上品な所作を際立たせているようだ。
カラーパレットがシンプルだからこそ、それぞれの素材のテクスチャーが生きてくる。ラグジュアリーなファーやスパンコールは、「洗練された上品さ」を表現するうえで、ひときわ目立つ存在といっていいだろう。顔半分を覆うようなスタンドカラーの七分袖コートは、毛足の長いファーがスカートのプリーツと連動するようにふわふわと浮遊している。グレーニットパンツの足元にあわせたファーサンダル、ラップコートの手元に持った大判のファーストールなどの小物類も、リラクシングでありながら贅沢で洗練されている。
スパンコールを前面にあしらったドレスは、その眩いきらめきがあるからこそミニマル。まさに一切の無駄をそぎ落としたデザインは裾までストンと落ち、歩を進めるとたなびくフラットな生地が高貴な輝きを教えてくれる。