ヨシオクボ(yoshiokubo) 2024年春夏コレクションが、2023年7月25日(火)マクセル アクアパーク品川にて発表された。
どこか非日常的な空気が流れる“夜の水族館”を舞台にした今シーズン。デザイナーの久保嘉男がコレクションテーマとして掲げたのは、その幻想的な光景とは意外にも似つかない言葉──「混濁」だ。
春夏の涼しさや爽やかさをしっかりと落とし込みながら、得体のしれない“なにか”を表現したかったという久保嘉男。それは例えば、水槽のガラスを斜めから見ると、歪んだようにうつる感覚や、結露が出来た窓の向こうにぼんやりとみえる何か…。そういった重なりによって生じる微妙な見え方を、洋服の上で表現する実験的なコレクションとなった。
そんな今シーズンのムードを体現するのは、こだわりのカッティングと素材選びだ。一番の好例となるのは、ポリエステル生地に施した、葉っぱの形のレーザーカット加工。ボディから切り抜かれた葉っぱ型の生地も、そのまま残しているのが特徴で、垂れ下がったモチーフのシルエットそのものも重力にならって変化。服と世界の境界線があいまいになるような、ユニークな表情を生み出している。
この特徴的なディテールは、開襟シャツをはじめ、オーバーサイズのTシャツ、ショートパンツなどに登場。時にカットアウトモチーフにはメッシュやチュールも重ねることで、より一層複雑な表情を生み出している。アイテムや色味そのものは極めてベーシックにも関わらず、思わずそのディテールに目を凝らしてしまう…そんな大人の遊び心を洋服の随所から感じることが出来る。
また素材作りにも一捻り。シャツやパンツに使用されたカットジャカードは、生地の制作の上で飛ばしていく糸を、従来よりも多く残すことで、糸そのものが飛び出しているかのような表情豊かな仕上がりに。またウェア自体もリバーシブルに仕上げており、裏返すと“海の生物”のモチーフが現れる、今シーズンならではのデザインが採用されている。
シャツの上にさらりと纏ったロングコートは、シアー素材で切り替えることで、洋服作りの解体・再構築の過程を覗かせているような構造に。それはきっと、デザインとしての見せ方だけでなく、洋服作りの楽しさそのものも伝えているようにも感じられる。着る人にとっても大切な一着になるように…そんなデザイナーの愛が詰め込まれた洋服の数々が、世代を超えても受け継ぎたい、長く愛用できる存在になるに違いない。