企画展「ハニワと土偶の近代」が、東京国立近代美術館にて、2024年10月1日(火)から12月22日(日)まで開催される。

ハニワや土偶はどのように注目されていったのか？

企画展「ハニワと土偶の近代」は、ハニワや土偶といった出土遺物が、近代以降になぜ注目され、その評価がどのように広がったのかを紹介する展覧会だ。

従来、考古学の資料として扱われてきた出土遺物は、戦後の岡本太郎やイサム・ノグチによって、その美的な価値が「発見」されたと語られてきた。こうして岡本とノグチは、「縄文的／弥生的」という二項対立を代表する人物となったのである。しかし近代以降、出土遺物は、美術に限らず広範な領域で関心を集めてきたのだ。

本展では、美術を中心に、文化史に登場する出土遺物のモチーフの展開を、明治時代から現代にいたるまで紹介。日本画や洋画ばかりでなく、陶芸、出土品を克明に描いたスケッチ、マンガまで、幅広い時代とジャンルの作品を一堂に集めて展示する。

古代と近代の出会い

古物を愛好する人々は近代以前にも存在し、江戸時代後期には「好古家」と呼ばれていた。やがて明治時代に入ると、西洋の人々を通して、日本に「考古学」がもたらされることになる。本展の序章では、「好古」・「考古」・「美術」が重なりあう場で描かれた出土遺物に着目。河鍋暁斎の《野見宿禰図》や五姓田義松によるハニワのスケッチなどから、近代の入り口における出土遺物への関心を紹介する。

近代国家・日本と出土遺物

日本が近代国家として形成されてゆくなか、ハニワは「万世一系」の歴史を象徴する役割を担うようになった。ハニワは上代の服飾や生活を伝える資料として、日本神話のイメージを育む助けとなったのだ。また、日中戦争が開戦し、仏教伝来以前の「日本人の心」に源流を求める動きが高まると、ハニワの「美」にも目が向けられるようになる。第1章では、蕗谷虹児の《天兵神助》などを展示し、近代国家・日本と出土遺物の関係に光をあててゆく。

戦後日本と伝統

敗戦で焼け野原となった戦後の日本では、その復興と開発のため、あらゆる場所が発掘現場となった。こうしたなか、万世一系の天皇を中心とする戦前の歴史観から脱却するうえで、考古学は実証的な学問として注目されることになったのだ。また、「縄文的／弥生的」という二項対立のもとで伝統を捉えようとする動きも、高度経済成長を背景とする建設ラッシュと無縁ではなかった。第2章では、戦後日本における出土遺物の捉え方に着目し、長谷川三郎の《無題—石器時代土偶による》、イサム・ノグチの《かぶと》や岡本太郎《犬の植木鉢》などを展示する。

現代における出土遺物のイメージ

ハニワや土偶のイメージは、徐々に人々のあいだに浸透してゆくこととなった。とりわけ1970〜80年代においては、いわゆるSF・オカルトブームと合流して、特撮やマンガなどで先史時代の遺物に着想したキャラクターが数多く作られている。これは、縄文時代や古墳時代の文化が、「日本人」の源流として内面化されていることを示しているといえるだろう。第3章では、タイガー立石の《富士のDNA》 、水木しげるのマンガ『縄文少年ヨギ』など、出土遺物にまつわる現代の作品を紹介する。

展覧会概要

企画展「ハニワと土偶の近代」
会期：2024年10月1日(火)〜12月22日(日)
会場：東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
住所：東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間：10:00〜17:00(金・土曜日は20:00閉館)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日：月曜日(10月14日(月・祝)、11月4日(月・振)は開館)、10月15日(火)、11月5日(火)
観覧料：一般 1,800円(1,600円)、大学生 1,200円(1,000円)、高校生 700円(500円)
※( )内は、前売および20名以上の団体料金
※中学生以下、障害者手帳の所持者および付添者(1名)は無料(入館時に学生証などの年齢のわかるもの、障害者手帳などを要提示)
※本展の観覧料で入館当日にかぎり、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4〜2F)も観覧可

【問い合わせ先】
TEL：050-5541-8600(ハローダイヤル / 9:00～20:00)