タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)の2025年春夏コレクションが発表された。
「Plainsong」と題された今季のタカヒロミヤシタザソロイスト.は、アグレッシヴな雰囲気を匂わせつつも、テーラリングを軸にクラシカルな佇まいを基調としている。それは、デザイナーの宮下貴裕が自ら語るように、「洋服の着方を正す。そのような考えから創り上げた」ものでありながら、「そう簡単に着やすくはさせない」という思いを、直接的に反映しているといえるだろう。
もう少しデザイナーの言葉を手繰り寄せれば、宮下の製作では、イギリスとアメリカという要素がコレクションごとに異なるバランスで現れるものの、「何かを強く物申したい」ときには、イギリス的な側面が顕在化するという。「洋服の着方を正す」という言葉から窺われるように、今季の軸にあるのは、構築的なテーラリングといったブリティッシュの要素である。
そのテーラリングに目を向ければ、シングルブレストやダブルブレストのテーラードジャケット、チェスターコートは、決してオーバーなシルエットを描くことのない、セットインショルダーのジャストサイズ。テーラリング以外に目を向ければ、比翼仕立てのバルカラーコート、ファイヤーマンコートやキルティングコートなど、誇張のないサイズ感で仕上げたトラッドなアイテムを数多く見てとることができる。
その一方、「そう簡単に着やすくはさせない」という言葉が示すように、トラッドなアイテムは中庸を行くために選ばれているのではない。もっとも顕著なのが、テーラリングなどに施された過剰なボタンやリボンの装飾だろう。その背景には、イギリスのパンクファッションを牽引しつつも、2018年にこの世を去った、ジュディ・ブレイムへの思いがあったという。ピンやチェーンなどを多用したスタイルで知られるブレイムと、宮下は親交を結んでいたようだ。フロント、ショルダー、そしてスリーブに連なる装飾の律動は、そのスタイルを変奏したものだといえるだろう。
何より、コレクションを見渡してみれば、カラーパレットはレッドとブラックという、力強い2つのカラーで厳格にまとめられている。コーディネートにおいても、テーラリングのセットアップにとどまらずショートパンツを多用することで、端正さを屈折。オープンカラーシャツといったシンプルなアイテムにおいても、音符柄やゼブラ柄といった存在感あるパターンを取り入れることで、力強さを持たせた。