ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)の2025年春夏コレクションが発表された。
日本人の精神性をテーラーを通して新たな男性像として表現を進めるソウシオオツキ。"和"そのものが表現の中核となった2024年秋冬とは対照的に、2025年春夏では、模倣的ともいえるバブル期の"和"の精神に光を当てた。
コレクションの主軸となったのが、デザイナーが感じた日本のバブル経済期を背景にした違和感。バブル期は、経済の急成長とともに所得水準が向上し、消費文化も活発化していった。結果として、ファッションに対する意識の高まったものの、イタリア産の表記だけで洋服が売れていくという違和感が生まれたという。コレクション全体で、海外文化の表面的な模倣から生じた違和感を表現している。
コレクションでは、イタリア産など外見的な華やかさを求めるバブル期の違和感を表現。例えばジャケットは、ゴージライン、胸ポケット、ウエストライン、袖口のボタン位置を低く設定し、男性的な威厳が排除されたデザインとなった。本来イタリア産のスーツでは、それらは高めに設定され、男性的な力強さの表現につなげているが、今季のソウシオオツキは不完全な模倣精神から生まれてしまった違和感を細部に演出している。
シルエットでも、模倣から生じる違和感が見られる。1980年代のイタリア製スーツは細身でシャープなシルエットが主流であったが、ソウシオオツキは肩パッド入りで着丈長めのリラクシングなシルエットを提案。バブル期の日本では、スーツを通じて経済的な成功や社会的地位を見た目で表現しようとする風潮が強く、肩パッドを使って肩幅を調整して強調することで、スーツを着た際のバランスを良く見せる効果があった。ソウシオオツキでは、不完全な模倣から生まれた違和感をシルエットにも落とし込んでいる。
イタリアのスタイルを模倣しようとした結果、生まれた違和感はシワ感のある生地にも表れている。生地は、1980~90年代に高級イタリアファッションを代表するジョルジオ・アルマーニのウールサージを参考にしている。ウールサージのシボ感と凹凸ある見た目が、日本の着物の縮緬に見えた誤解を着想源とした新素材だ。ソウシオオツキでは、あえてウール素材をウォッシュ加工して織り目をクラッシュして風刺的に表現している。
カラーパレットからも、当時の日本人の模倣的精神を再現させているのがうかがえる。フォーマルでありながら高級感を持つ、渋みのあるグレーの色味は、まさに「ドブネズミスーツ色」と当時呼ばれた色で、1980年代の尾州地方の伝統的な織物工場に残されていたサンプルを基に再現された。