キコ・コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)の2025年春夏ウィメンズコレクションを紹介。
服を纏う者がどのような過去を歩み、どのような未来へ向かっていくのか。そんなロマンチックなアイデアを、現実と空想を織り交ぜて表現した今季のコレクション。キコ・コスタディノフは、時の流れを単なる経過ではなく、過去から未来への“移動”と捉えているようだ。
そんな思考を裏付けるのが、空の移動手段である“航空”に関連したウェア。ファーストルックから立て続けに登場したフライトスーツやパイロットの制服風テーラードジャケットは、優雅なアレンジを加えているのがポイント。スリーブにたっぷりと生地を用いてボリュームを出したり、襟元のVゾーンを深くデザインして素肌を覗かせたりなど、自然な抜け感を演出してみせた。
流れる時を可視化したような、非現実的なシルエットも特徴的。コレクションのキーアイテムとなったスカーフは、そのほとんどにワイヤーが仕込まれており、強い風が吹き抜けるかのごとく、重力に逆った形状を保ち続ける。
また、シルクのような光沢を携えたドレスは美しいドレープを生み、ワンピースの切り替えに多用された薄手のコットンは繊細なシワを寄せるなど、テキスタイルの特性を活かした有機的な質感も際立っていた。
第2弾となるリーバイス(Levi's)とのコラボレーションは、エキゾチックな自然の情景をはじめ、鳥や虎、馬、恐竜など様々な生き物を描いたスタンププリントを主軸に展開。デニムのセットアップでは、思い出の詰まったスクラップブックのようにあらゆる絵柄を敷き詰めた。
カラーパレットは、ブラックやホワイトのモノクロから、鮮やかなレッドやオレンジ、グリーン、冷静なグレーやブルーなど、多くの色彩で構成。パイピングや切り替え、プリント、刺繍などあらゆる技法を用いて、アイテムの中に複数のカラーを共存させている。
ライトブルーのデニムジャケットやパンツは、経年変化でところどころ色褪せたような風合いに。ヴァイオレットとグレーのドレスにはそれぞれ明け方の霧のようなホワイトと夕焼け色のオレンジがじんわりと添えられており、確かに過ぎ去る時の流れを感じさせた。