2025年1月31日(金)公開の劇場アニメ『ベルサイユのばら』にて、主人公・オスカルの声優を務める沢城みゆきにインタビュー。
池田理代子による「ベルサイユのばら」は、革命期のフランスで懸命に生きる人々の、愛と人生を鮮やかに描いた人気少女漫画。連載中から熱狂的なファンを獲得し、宝塚歌劇団による舞台やTVアニメなど多彩にメディアミックスされながら、愛され続けている作品だ。そんな不朽の名作が50年の月日を経て、“完全新作”の劇場アニメ『ベルサイユのばら』として蘇る。
映画公開に先駆け、物語の主人公・オスカルを声で演じた沢城みゆきにインタビューを実施。「ベルサイユのばら」への印象から、オスカルを演じるうえで大切にした想いや役作り、峰不二子や鬼太郎などの“国民的キャラクター”を掴み取るために意識したことまで、彼女の声優人生についてじっくり話を伺った。
漫画を飛び越え、テレビアニメや演劇としても愛され続ける名作「ベルサイユのばら」のオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェを演じるにあたり、緊張やプレッシャーはありましたか?
意外かもしれませんが、ノープレッシャーで挑むことができました。もちろん「ベルサイユのばら」という大作、中でもオスカルを演じることの責任の大きさは感じていました。しかし人気や歴史のある作品ほど、自分のやるべきことにすぐ着手した方が良いんです。
誰かからのプレッシャーって、本来私の課題じゃないはずなんですよね。自分の課題は、役のことを1つでも多く知り、理解していくこと。なのでプレッシャーを感じずに、“ワクワクしながら”役を知っていくことを意識しました。その方が、フィルムにのせた時により生き生きとしたキャラクターになる気がします。
“完全新作”として描かれた今作では、どのようなことを意識して演じられたのでしょう?
完全な新作ではあるんですけれども、目指していたのは原作「ベルサイユのばら」を今のアニメーション技術で蘇らせることです。オスカルの役の魂は原作からなるべく引き上げてきているのに近いと思います。長年の“ベルばら”ファンの方にも「そうそう、原作ってこうだったな」と思っていただけたら嬉しいです。
そもそも「ベルサイユのばら」に対して、どんなイメージをお持ちでした?
オーディションきっかけで原作「ベルサイユのばら」を拝読したので、その前は宝塚歌劇団のポスターや…身近なところで言うとLINEスタンプ(笑)。オスカルに関しては、テレビアニメで長浜忠夫さんと出崎統さんが描かれた“彫刻のような人”という印象だったのですが、原作を読んでいくうちに、やんちゃな部分もあるキャラクターなんだと知って、驚きと同時に親近感を覚えました。
役に決まった時のお気持ちは?
もっと、オスカルを知らなくては…!という気持ち(笑)。あとは歌唱パートも多くあったので、なんとか歌を間に合わせるように必死の思いでした。
役を知ること以外で、作品関係なく心がけてることはありますか?
“役と五感を共有してみる”ことですかね。例えば、あんまり弁が立たなくて内向的だった人が、突き飛ばされて起き上がってきた時に、人を刺すシーンがあるとします。あまりにも急すぎない?って思うんですけど、試しに同じように倒れてみると、床の上ならまだしも、ぐしゃっとした土だと、信じられないぐらい屈辱的な気持ちになるんですね。言葉だけで理解するというよりも、 相手の立場に立って、共感を超えて“同感”していく。そうすると、役の心情を深く理解できるので、時間の許す限りはトライしています。
劇場アニメ『ベルサイユのばら』では、どのようにアプローチされたのでしょう?
(マリー・)アントワネットが落馬してしまった責任をアンドレ(・グランディエ)が問われる場面で、オスカルが「アンドレを裁くなら、主人である私の責任なので、私を先に裁いてください」と言うんですけど、おそらくそのとき彼女は、肋骨にヒビが入っている状態。馬から落ちているので、ものすごく体が痛いはずなんです。体は痛いけれども、毅然とした態度で物を言わなければ…!という、気持ちのストレッチを意識して、丁寧に演じました。
成長する過程によって、声色が変わっていったのも印象的でした。
オスカルは、作品が進んでいくにつれて “自分には知らないことがたくさんある”という気づき、すごく能動的に新しいことを知ろうとしていくんです。物理的に歳を重ねていくことより、彼女の心が解放されて本当の自分になっていく様が声色に現れていたらいいなと思います。
ちなみに、沢城さんはオスカル、アントワネット、アンドレ、(ハンス・アクセル・フォン・)フェルゼンの中で、 どの人として生きてみたいですか?
ありがたいことに今作でオスカルとして生き抜いたので、そこを除外すると…。一度アントワネットの装いで日々を過ごしてみたいかな。絶対にできないから(笑)。でも生活しづらいのかなぁ。
常に見られていて大変そうですよね…(笑)。
あと私、新聞記者のベルナール(・シャトレ)に憧れていて。文字と言葉の力で多くの人を先導するだなんて、思いもつかないし、あのフランス革命の中心にいたルソーを含め、哲学者たちと熱い時代を過ごしてみたいです。
沢城さんは、今作のオスカル役をはじめ、「ルパン三世」の峰不二子、「ゲゲゲの鬼太郎」の鬼太郎など、すべてオーディションに合格されて数々の名作に出演されてきたと思います。夢を叶える秘訣を教えてください。
知っていたら本でも出したいところですが(笑)…まずオーディションの話をいただけるようになるまでが大変なんです。うちの事務所だけで声優が400人いて、一つの役にエントリーできるのは1人か2人ということもあります。指名でない場合は、事務所のマネージャーにその1人、2人に選出してもらわなければいけない。なので“自分はこれが得意です!”ということをマネージャーに届けることからスタートします。
あとは、その作品に求められてるものに、たまたま自分が合致したというのも大きな要因かなと思ってます。
と言いますと?
たとえば「ゲゲゲの鬼太郎」は、期によって鬼太郎像が違うんです。太陽のように明るい鬼太郎や、月のよう物静かな鬼太郎も描かれていて。私がやらせていただいた第6期は、“月”の鬼太郎だったんですね。
今では笑い話ですけど「1番暗かったので、沢城さんにしました」と言われたぐらい(笑)。そういった巡り合わせはあるし…、重ねて誰にでもチャンスは降ってくるとも感じています。1番大切なのは、そのチャンスをキャッチできる準備をしているかどうかだと思う。
準備されていることを具体的にお聞かせいただけますか?
例えば、いつか週刊少年ジャンプの主人公がやりたいと思っていた時に、それに必要だと思う準備を全部しておくこと。サッカーをする、野球をする、格闘技をする。 必ず役に立ちますよね。漫画を読むのではなくて、同じだけの熱量で本当に試合をしている人を見に行くとか、ありとあらゆる準備ができるはずです。チャンスを掴めるこの握力は、自分のものだから。
本当におっしゃる通りだと思います!ご自身が思うターニングポイントとなった作品はありますか?
どの作品もそれぞれに…あるなと思います。と言うのも、14歳から声優を始めて、10年近くゆっくり育てていただけたんです。女の子役はできたよね、じゃあ次は男の子役はどうだろう?と言う感じでオーディションに呼んでもらったり。男の子ができたよね、そしたら少し上のお姉さん役も背伸びしたらできるのかな?と、また次のオーディションに呼んでもらえる。そんな風にちょっとずつステップを踏ませてもらってきたので、1作品1作品、課題があったように感じています。
環境だけでは成長できない部分もあるかと思います。ご自身で意識していたことはありますか?
沢城:先輩から「役ごとにテーマを決めて、“今回はこれができるようになるんだ”という意思を持った方がいい」と言っていただいたことがあり、意識しています。毎回自分で課題を作り、クリアしてできるようになっていくというのは、忘れないようにしている習慣ですね。
【作品詳細】
劇場アニメ『ベルサイユのばら』
公開日:2025年1月31日(金)
原作:池田理代子
監督:吉村 愛
脚本:金春智子
キャラクターデザイン:岡 真里子
音楽プロデューサー:澤野弘之
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
アニメーション制作:MAPPA
製作:劇場アニメベルサイユのばら製作委員会
配給:TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
声の出演:
オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆき
マリー・アントワネット:平野 綾
アンドレ・グランディエ:豊永利行
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹ほか
ナレーション:黒木 瞳
主題歌:絢香「Versailles - ベルサイユ - 」