シュタイン(ssstein)の2025年春夏コレクションが発表された。
今季のシュタインがテーマとしたのが、「NUANCE IN BETWEEN」。あわいに潜むニュアンス──リラクシングなシルエットが織りなす自然な佇まい、装飾性を回避したミニマルさを基調としながら、しかしミニマルであるがゆえに際立つ繊細な階調を引き出しているといってよい。
シュタインが直接的な着想源として挙げているのが、ディーター・ラムス、マリオ・ボッタ、倉俣史朗やサビーネ・マルセリスらの名前だ。ラムスは、「Less, but better」という言葉に見るように、簡潔な機能美を備えたデザインを追求した。ボッタは、簡潔な形でありながら、光と影の効果により軽やかな表情を示す建築を目指した。倉俣は、アクリルやガラスといった工業用素材を用いつつ、詩情あふれるデザインを手がけ、倉俣に敬意を払うマルセリスは、光と素材を巧みに融合させたデザインで知られている。
これらの着想源から浮かびあがるのは、機能と呼応する削ぎ落とされたフォルムを基調としつつ、そこに軽快さと親密さ、あるいは素材の意外性が絡みあうデザインだろう。機能と呼応するミニマルなフォルム、その親密さは、シュタインの基調にあると言ってよい。ダブルブレストのコートはリバーシブルに仕上げ、テーラードジャケットや、トレンチコートとブルゾンを前後に組み合わせたアウターも、身体を包みこむ柔らかなショルダーラインを描くなど、力むことのない佇まいを演出している。
素材は、簡潔さと親密さを架橋する役割を担っているといえる。スプリングコートには、最高級のコットン・ナイロンを採用し、ダイナミックなシルエットと軽やかな佇まいを両立。また、シルクやリネンも随所に用いており、ブルゾンにはナイロンを彷彿とさせるシルクを採用するほか、ウール・シルクが表情豊かなネップ感を織りなすなど、素材ごとに豊かな表情を生みだした。
ところで、今季のシュタインが着想を得た人物のひとりに、ファッション写真で知られるユルゲン・テラーを挙げることができるという。とはいえ、彼が撮影したファッション以上に、写真によって切り取られることで、衣服が本来のシルエットからデフォルメされる部分に関心を覚えたという。こうしたデフォルメは、直接的にはツイストしたデザインに反映されている。デニムパンツやランダムにタックを施したニットには、大胆にツイストを加えることで、見慣れた衣服にデフォルメを施しているといえよう。
カラーは、ブラックを基調に、グレージュ、ダークブラン、ネイビー、そして淡いサックスブルーから構成。いずれのウェアも、無地を中心にあくまで落ち着いた雰囲気にまとめつつ、デニムにはウォッシュ後にベージュカラーのスプレーを施し、玉虫色のような色調を生みだす一方、ロングジャケットなどには、一見無地のグレーにも見えるハウンドトゥースを用いるなど、絶妙なニュアンスで仕上げた。