コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)が、2015年春夏コレクションをパリで発表した。
ブランドを象徴するカラーである「黒」は姿を消し、ランウェイは真っ赤に染まる。今季のタイトルは「Roses&Blood(薔薇と血)」。薔薇と聞くと、美しいイメージがあるが、今回は昔から政治、戦争、宗教に登場した血を伴うバラがイメージだ。ときに血を流して戦い、革命を起こす彼らのアナーキーな精神。そんな強い意思を「赤」という色とともに、様々な造形で表現したコレクションは、息を飲むような存在感とともに、恐ろしささえ感じさせる。
無数のフリンジに薔薇が咲き乱れた一着がファーストルックを飾る。深い赤、鮮やかな赤、褪せた赤……。異なる発色で彩られた花の数々をつけたピースは、歩くたびにフリンジが揺れ動くものの、ぎっしりと敷き詰められた装飾で、どこか重みがある。その後もランダムに鋏を入れて切り刻んだフェイクレザーのコートや、生地をつなぎ合わせ生物のようなフォルムを描いたピース、ジャカードやエナメルでアシンメトリカルに装飾したコートなどが登場。纏うための洋服というより、アートピースともいえる服の数々は、モデルが袖を通すことでフォルムや動きが生まれる。そこに人々を心理的に刺激する色、赤を用いることでを観客たちに強烈な何か投げかけた。
また「血」を思わせる要素は、白地に赤をほとばしらせたプリントが最も分かりやすい。滴るように激しく染められた赤は、不思議と怖さではなく、戦いで流れる血を連想させる。ジャケットをもとにパイプのような太いチューブがいくつも身頃にあしらわれ、360度どこから見ても凸凹とした形に。そうしたビッグボリュームを作りながらも、ボトムはストンとしたスカートを合わせてバランスをとった。
またコム デ ギャルソンの服は、凄まじい強さの中に、実は女性的な面を持ち合わせていることがある。先述したパッチワークの服は、後ろからフリルのショートパンツを覗かせたり、縮めたギャザーでドレスを創ったり。フリルをたっぷり使用したものも多いほか、赤ずきんのようなフードをまとったルックなど、どこか可愛らしささえも感じさせる。無論、川久保玲が意図してそのような印象を生み出しているかは、定かでない。
代表的な黒の他に、川久保の好むカラーは赤も挙げられるそうだが、なぜ今季その一色のみを選んだのか。今シーズンに込められた「Roses&Blood」というタイトルが、現代に何か訴えかけているのか、考えさせられるコレクションだった。