ヴァレンティノ(VALENTINO)の2015年フォールコレクションは、ボヘミアンたちが自由奔放に過ごした1年を振り返るような、ドラマティックでロマンあふれるもの。テキスタイルデザイナーのセリア・バートウェル、画家のジョゼッタ・フィオローニ、芸術家であり女優のグロリア・ヴァンダービルトの3人をミューズとし、自分なりの美意識を持つ自立した女性像を描いていく。
ヴァレンティノらしい優雅なフラワーモチーフから、コレクションはスタートする。ミューズの1人であるセリアが、ボッティチェリの絵画『プリマヴェーラ(春)』を再解釈。ときに微笑みかけ、ときに繊細な一面を見せるように、花々がワードローブに多彩な表情を与えていく。スタンドカラーのミニドレスやマキシ丈ドレスは、透け感のある生地をセレクトすることで、模様に立体感を生み出した。また光沢のあるジャカード生地は、個性の強さを訴えかけてくる。
ジョゼッタが描いた、情熱的な真っ赤なハートをプリーツのミニドレスやボウタイ付きドレスにオン。バッグやシューズも同じモチーフで揃え、ハートフォーミングなムードを高めていく。そこに加えたのは、カモフラージュプリント。刺繍入りのフードコートは、マルチカラーのロングブーツと合わせ、平和主義のスローガンを体現しているようにも見える。
愛に触れた花々は、生命の息吹をもたらしていく。陽気な気候を楽しむように蝶が舞い、太陽がサンサンと輝く。そんな風景は、レースドレスやニットコートに落とし込まれた。点画で森を表現したようなスカートや羽ばたく蝶をあしらったコート、大振りの花を添えたスカートなどが登場。
その後は、夏の余韻に浸るかのように、ポップなカラーがコレクションを占めていく。デニム地のワイドパンツをファーワンピースのスリットから覗かせたり、カシミアケープをパンツと合わせてカジュアルダウンさせたり、カラーブロッキングのブラウスとショートパンツを合わせたり。フレッシュな雰囲気のコーディネートに、パキッとしたレオパードやエキゾチックな幾何学模様を差し込み、天真爛漫な姿が描かれた。
やがて日が落ち、夜を迎えたかのように、夜空や宇宙のモチーフとともに、コレクションは終盤を迎える。瞬くように輝く月や星座のような星々は、高揚感のある色彩や落ち着いた色味を用いて表現され、ケープコートやノースリーブワンピース、マキシ丈スカートに散りばめられた。ジュエルカラーのロングドレスが展開され、しっとりとしたムードで今シーズンの幕は下りた。