ハナエモリ マニュスクリ(Hanae Mori manuscrit) 2016年春夏コレクションが、2015年10月15日(水)、東京・渋谷ヒカリエで発表。アメリカとカナダの国境付近に位置する「五大湖」をテーマに、雄大な自然や動植物、そして自然と共存する都会を落とし込んだワードローブを展開した。
70ルックあまりで描き出したのは、湖を取り囲む大自然と、湖面に映り込む“水中”の世界。この実虚が入り混じる世界観を、会場や音楽でも表現した。青く薄暗い空間に垂れ下がる無数の柱、パナソニックとのコラボレートヘッドホンで実現した全方向からの音の反響。都会のど真ん中にいることを忘れ去るかのような、雰囲気への追求が、コレクション自体の価値を大きく引き上げていた。
ファーストルックを飾ったのは、全身を透け感のあるホワイトで統一したドレスルック。フリンジのなびきは目を見張るものであったが、これは装飾だけの影響ではない。通常のオーガンザよりも滑りのあるものをチョイスし、風と共に膨らむような動きを演出した。
無垢なパレットかと思いきや、その後はネイビーやピンク、シルバーなど幅広い配色。スワロフスキーのカッティングを採用したジャカード織りの布や、3Dスキャナーを使用したフラワープリントなど、ハナエモリが継承してきた鮮やかな色使いを、現代的に再解釈したテキスタイルが印象的だった。
あらゆる表情をみせる布地にも、引けを取らない存在感を放っていたのが、ガーメンツのフォルムだ。それぞれのモチーフが最大限生きるようにと、デザイナーの天津憂が1つ1つ構築していったのだという。
洋服のそれぞれにストーリーがあり、ショー全体にストーリーがある。ルックが登場する度に目を奪われる、そんな美しいコレクションがランウェイを飾った。