2011年6月1日(水)、ファーやスキン(レザー)を巧みにエレガントかつウェアラブルに仕上げるデザイナー、カール・ドノヒューが渋谷のショールームにてインタビューに答えてくれた。彼の作品は1つ1つ丁寧に仕上げられており、ファーやスキンと言ったラグジュアリーな一面もありつつ、日常生活でも着られるという両面を掛け合わせた服であることが最大の魅力。
カール・ドノヒュー(以下カール) : 大学でファッションを勉強している時に多民族の服装(民族衣装)のインスピレーションをミックスするというプロジェクトがあり、チベット民族の人々がシープスキン(羊革)を着ている古い写真を見て、興味を持ったのがきっかけ。
在学中にThe Real Sheep Skin Association(シープスキンを専門とするイギリスの団体)で多種多様なシープスキンを見る事が出来たんだ。大学では布というファブリックを中心に扱っていたため、ファーやスキンと言った新素材を目にした時はとても興奮したよ。
業界の人とも頻繁に会い、知識を増やすようになり、シープスキンやその他のスキン、ファーを使ってビジネスを立ち上げようと考えるようになった。卒業後すぐに自分のコレクションを出す事になってとても嬉しかったよ。イギリス人がファーやスキンと言った分野を専門に活動する事は珍しく、この分野を取り扱うデザイナーはイタリアに多かった。でも、イタリアのデザイナーと違ってイギリスの学校で学んだという経緯があったため、コレクションには自分のテイスト(ブリティッシュテイスト)が入っていると思う。
ファブリックと比べてファーやスキンでデザインするのは全く違うアプローチだから、とても楽しい。たとえばフォックスの毛皮はとても小さい為、他の素材とミックスして大きくしていくのだが、その工程がとても楽しいよ。
カール : 過去10年、15年でファーやレザーを取り扱う技術はとても発展し、ピースを軽くする事が可能になったんだ。また僕自身、革業者(タンナー)とも密接に仕事をしており、みんながどのような物が欲しいかを説明している。1970年代、80年代の時の様な重いファーコートを現代の女性たちは着ようとは思わない。様々な技術と共に、革業者と一緒に働いている。
カール : 人に興味を持ってもらえる、またウェアラブルな服を作る事が重要。僕が作る服はキャットウォークのためでも無ければ、商業目的でも無い。僕のデザインする服が、着る人の問題を解決してくれればとも思っている。女性にとって着やすい服を作る、また女性がそのピースを纏う事により、自分の一部(個性)として思って欲しいな。
KARL DONOGHUE 2011-12A/Wコレクションより
カール : 僕にとってとても重要な事は、一般の人々に普段着の一部として着てもらう事だ。僕は、ファーはレッドカーペットやプレミアの時のためだけにあるものではなくて、日常着られる、また仕事に行く時に着られる服であって欲しいと思っている。
インタビューをしている中、カールの仕事に対する真剣さがとても伝わってきた。1980年代に起きたファーやスキンを着る人に対するバッシングが広まる中で、彼は自分の信じる理念を貫き通した。デンマークに渡り、ファーやスキンに関する知識を深め、また動物達がどの様に扱われているか徹底的に勉強。
彼が作る服が素晴らしいのは、そのデザインが素晴らしいだけでなく、彼自身とてもまじめで手を抜かず、そしてファーやスキンに対する強い思いがあるからかもしれない。細部にまでこだわったアイテムには、ハンドステッチされているパーツもある。
インタビューを終えた後、彼の言葉がとても印象的だった事を思い出す。
“I create the inspiration from the piece I sell to her. She then becomes the creator.”(僕は自分がデザインした服から得られるインスピレーションを彼女[お客]に売る。そして彼女はクリエーターとなる。)
彼がいかに彼の服を買ってくれる人・ファンを大切に思っているかを感じさせる一言だった。
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