メゾン マルジェラ(Maison Margiela)の「アーティザナル」コレクションを紹介する展覧会「メゾン マルジェラ アーティザナル 2024 エキシビション 東京」が、東京・恵比寿にて、2024年11月2日(土)から24日(日)まで開催される。
メゾン マルジェラのオートクチュールにあたる、「アーティザナル」コレクション。このコレクションで提案された実験的な発想や技法は、メゾン マルジェラのプレタポルテに相当する「Co-Ed」コレクションなどへと派生してゆくことになる。
展覧会「メゾン マルジェラ アーティザナル 2024 エキシビション 東京」は、2024年「アーティザナル」コレクションを多角的に紹介するエキシビション。ショーで披露された実際のルックを展示するほか、コレクションの製作過程に光をあて、着想源や技法についても紹介する。
まず、2024年「アーティザナル」コレクションの特徴についてふれておこう。今季、モチーフとなったのが、夜遊びに興じる人々や、その服の下にあるものなどであった。具体的な着想源には、20世紀に活躍した写真家ブラッサイや、フォーヴィスムの画家キース・ヴァン・ドンゲンなどが挙げられている。
オーストリア=ハンガリー帝国出身のブラッサイは、1924年にパリに渡っている。この頃、写真を学び始めたようだ。異邦人のブラッサイを受け入れたのが、夜のパリである。カフェ文化が流行する当時、ブラッサイはカフェで顔馴染みになった人々を撮影するようになった。そういった人物は、いわばアングラ社会の人々であった。ブラッサイは、人間味の溢れる夜の街に目を向けたのである。
一方、オランダに生まれたヴァン・ドンゲンは、パリのモンマルトルに移り住み、アトリエを構えるようになる。オランダ時代から力強い筆致の作品を手掛けていたヴァン・ドンゲンは、やがて強烈な色彩でもってフォーヴィスムの画家として活躍。鮮やかでありならが、内面的な感情を感じさせる色を用いた、優雅で官能的な女性像などで知られることになった。
2024年「アーティザナル」コレクションでは、だから、ブラッサイを彷彿とさせる猥雑さや街への視線、ヴァン・ドンゲン的な官能性を見てとることができる。クラシカルでありつつも時間の経過を彷彿とさせる曖昧な素材感、身体の存在を浮き彫りにするコルセットのディテールなどが、随所に散りばめられているといえるのだ。
それでは、「メゾン マルジェラ アーティザナル 2024 エキシビション 東京」の様子を紹介しよう。
本展では、同コレクションで発表されたオリジナルのルックのなかから、25点を展示。たとえば、朧げなニュアンスを表面に浮かべるアルスターコートを見てみよう。ここでは、繊細なファブリックを重ねることで重さのある表情を生みだすで「ミルトラージュ」という技法が用いられている。本来は重厚であるコートをベースにしつつも、その素材ゆえ仕立てはあくまで軽やか。表面のチュールには、グラデーション調のプリントを施し、夜の光に揺らめくような表情を生みだした。