また、コルセットを彷彿とさせるシルエットは、今季のコレクションを特徴付ける要素のひとつ。ダブルブレストのテーラードジャケットや丸襟のロングコート、ストライプ柄のファブリックをシェイプさせ、表情に変化をつけたドレスなどに見られるように、ウエストを極端に絞ることで、ショルダーからウエスト、ボトムへと、コントラストのついたシルエットを織りなしている。また、緩やかなシアードレスの下にコルセットを透かして見せるなど、衣服の構築性と衣服を纏う身体性がとり結ぶ、緊張関係が浮かびあがらせているのだ。
そのほか、レースを徐々に劣化させて繋ぎあわせる「レトログレーディング」を駆使し、繊細でありつつもボリューム感に満ちたドレス、あたかも夜の雨に濡れそぼったかのような仕上げを施したテーラードジャケットやドレスなどを公開。さまざまな技術を駆使しつつ、夜の猥雑さと官能性を浮かびあがらせたルックの数々を目にすることができる。
本展の主眼のひとつが、コレクションの製作プロセスだ。会場ではその過程を、「レイヤーを1枚ずつめくるように」紹介している。その代表的な例が、解剖台の上に広げられたウェアの数々である。下からライトを当てることで、繊細な衣服の構造が手に取るようにわかる展示となっている。
ひとつ例にとるのならば、繊細なレースのドレスを挙げられるだろう。ファブリックを斜めに使うバイアスカットを駆使して動きを出し、その上にビジュー刺繍のきらめきをのせたドレスに加えて、手先のグローブから裾先の広がりまで、縫い目を不可視化した「シームレース」のドレスなどを展示している。
さらに、繊細なファブリックを重ねて重厚な表情を生みだす「ミルトラージュ」の内側に光をあてる展示、製作の初期段階でリサーチを行った資料を紹介するインスピレーションウォールなども展開している。
本展のメイン会場の下階では、鏡に囲まれた空間で映像を上映。2024年「アーティザナル」ショーのプロローグで使用されたフィルムと、コレクション準備中に撮影された未公開シーンを織り交ぜた映像を目にすることができる。
なお、本展の展示形式は、クリエイティブ・ディレクターのジョン・ガリアーノの考案によるもの。凝縮された展示空間ばかりでなく、オーディオガイドはガリアーノ自身が着想源や技法について語るものとなっており、目と耳を通してコレクションの世界に浸ることのできる展示となっている。
2024年「アーティザナル」コレクションの着想源となったのは、20世紀に活躍した写真家、ブラッサイ。メゾン マルジェラ オモテサンドウでは、10月18日(金)から11月24日(日)まで、「アーティザナル」コレクションのルックを展示する一方、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)では、10月26日(土)から11月24日(日)まで、漫画家・久保帯人の描き下ろしによる人物などを、オリジナルのルックとともに紹介する。
メゾン マルジェラ アーティザナル 2024 エキシビション 東京
会期:2024年11月2日(土)~24日(日)
住所:東京都渋谷区恵比寿南2-8-13 キョウデンビル2〜3階(メゾン マルジェラ トウキョウ上階)
時間:11:00~20:00(入場は19:30まで)
入場料:無料
※事前予約優先。予約は10月22日(火)18:00より開始(詳細についてはメゾン マルジェラ 公式サイトを参照)
■関連展示
・アーティザナル 2024 ウィンドウディスプレイ:メゾン マルジェラ オモテサンドウ
期間:2024年10月18日(金)〜11月24日(日)
場所:メゾン マルジェラ オモテサンドウ
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 1F
時間:11:00〜20:00
・アーティザナル 2024 ウィンドウインスタレーション:ドーバー ストリート マーケット ギンザ
期間:2024年10月26日(土)〜11月24日(日)
場所:ドーバー ストリート マーケット ギンザ 1F ウィンドウインスタレーション、3F メゾン マルジェラ・メゾン マルジェラ ブックストア
住所:東京都中央区銀座6-9-5 ギンザコマツ西館
時間:11:00〜20:00
【問い合わせ先】
マルジェラ ジャパン クライアントサービス
TEL:0120-934-779