ディオール(DIOR)の「バー」ジャケットは、1947年2月12日の誕生以来長らく、メゾンの、ひいてはファッション界のエレガンスを体現してきたアイコン的アイテムだ。現在では、マリア・グラツィア・キウリがシーズンごとのテーマになぞらえて「バー」ジャケットを展開している。
マルセル・ブサックの支援を受け、40歳でようやく自身のブランドを立ち上げたクリスチャン・ディオール。第2次世界終戦後間もない1947年2月12日、当時の女性たちが渇望した贅沢でエレガントなファッションを体現したのが、クリスチャン・ディオール初のオートクチュールコレクション提案した“ニュールック”だった。
コレクション発表の衝撃は“ニュールック革命”とも呼ばれるほどで、「バー」ジャケットは、そのスタイルに欠かせない存在とされた。キュッと引き締まったウエスト、なだらかなショルダー、ヒップを強調するペプラム、そして大きく開いた首元。女性の美しさを強調する要素を併せ持ち、以来、変わらずメゾンのアイコンとして知られている。
「バー」ジャケットは、まるで女性の身体の形をそのまま再現するかのような滑らかなシルエットが特徴。それは約150時間以上の時をかけてアトリエの職人たちが作りあげていく。ディオールが公開している動画では、デザイン画の作成から、パターン作成、裁断、仮縫い、縫製、ボタン付けの様子までを映し出している。
また、「バー」ジャケットが初披露された、ファーストコレクションの舞台裏を捉えた貴重なドキュメンタリー映像もディオールの公式YouTubeチャンネルにて公開されている。
「バー」ジャケットは、エレガントなシルエットを保ったまま、素材や装飾を変え、歴代のデザイナーによって再解釈され続け、進化した形で展開されている。
2021-22年秋冬コレクションで発表した「バー」ジャケットは、メゾンのアイコンモチーフのひとつである“カナージュ”をキルティングで施したデザイン。エレガントなシルエットはそのままに、キルティング特有のニュアンスでカジュアルなムードを程よく引き出した。
現在、ディオールのウィメンズ アーティスティック ディレクターを務めるマリア・グラツィア・キウリも、彼女なりの解釈によってあらゆるデザインの「バー」ジャケットを提案している。ディオール初の女性アーティスティック ディレクターとなったマリア・グラツィアの手掛ける「バー」ジャケットは、メゾンかつてない儚さと優しさ、大胆さと遊び心を兼ね備えた、枠にとらわれないデザインが魅力だ。
ムッシュ ディオールの最初の後継者イヴ・サンローランが愛した場所、マラケシュで発表した2020年リゾートコレクションでは、ジャングルを想起させるジャカード織のテキスタイルを用いて、パワフルに表現。エネルギッシュな自然のパワーを纏うことで、エレガントなだけではない「バー」ジャケットを完成させた。