パリで発表したディオール 2020年春夏ウィメンズコレクションでは、マリア・グラツィアらしい繊細な表現を加えてよりフェミニニティに昇華した。例えば、メンズライクなハウンドトゥースでつくるジャケットは、首元を通常より大きく開き、ファブリックとは対照的な官能的シルエットを魅力に。レースのスアートとレースアップのエスパドリーユを組み合わせて、新しい“ニュールック”を提案している。
2020-21年秋冬コレクションで発表した「バー」ジャケットはニット素材。それにより着心地がより滑らかになり、快適性がアップした。オリジナルのジャケットならではのボリューム感やカッティングを再現するため、4型以上のプロトタイプを開発し、完成に至った渾身の一作だ。
「30 モンテーニュ」は、メゾンの歴史発祥の地であり、現在もパリ本店を構える「パリ・アヴェニュー モンテーニュ30番地」から名付けられたコレクション。最もシンプルかつアイコニックなシルエットの「バー」ジャケットが提案された。
ムッシュ ディオールが生んだ「バー」ジャケットは、先述したように、過去歴代のディオールのデザイナーたちがあらゆる形で再解釈を続けてきた。次は、各アーティスティック ディレクターたちの個性光るジャケットから、歴史を彩った1着に目を向けたい。
ディオールの歴代アーティスティック ディレクター
・クリスチャン・ディオール(1946年~1957年)
・イヴ・サンローラン(1957年~1960年)
・マルク・ボアン(1960年~1989)
※1967年、本格的にプレタポルテをスタート、同年にベビー ディオールをスタート。1970年、メンズラインを展開。
・ジャンフランコ・フェレ(1989年~1996年)
・ジョン・ガリアーノ(1996年~2011年)
・ラフ・シモンズ(2012年~2015年)
・マリア・グラツィア・キウリ(2016年~)
徴兵に伴いクリスチャン・ディオールを去ったイヴ・サンローランに代わってデザイナーとなったマルク・ボアンは、自身初のコレクションで「スリム・ルック」を発表。Iラインのエレガントなシルエットで、ファッション界に新たな風を吹き込んだ。
そして、モダンでフェミニンなルックを得意とした彼は、ムッシュ ディオールにオマージュを捧げた「バー」ジャケットも提案している。かつてのコルセットは取り払われ、より滑らかなシルエットで女性らしいラインを完成させた。
現在メゾン マルジェラ(Maison Margiela)のアーティスティック・ディレクターを務めるジョン・ガリアーノもディオール歴代クリエイティブ ディレクターの1人だ。天才、そして鬼才とも言われる彼の創作は、これまでになく前衛的なデザインでアプローチした。
ガリアーノの「バー」ジャケットは、シーズンごとに全く異なるジャケットとかのように振る舞われた。ウエストのシルエットはそのままに、ボリュームある袖をドッキングしたり、膨らむようなラペルを組み合わせたり。トップメゾンのディオールのイメージを覆すような斬新な手法は、賛否両論があったものの、現代のデザイナーたちに大きなインパクトを与える存在となったことは間違いない。
長きに渡ってクリエイティブ・ディレクターを務めたガリアーノの解雇に伴い、その後任を担ったのは、ラフ・シモンズ。彼はそれ以前、自身のブランドとともにジル サンダー(JIL SANDER)も務めていた。
映画『ディオールと私』でも紹介された、ラフのデビューコレクションでは、「バー」ジャケットの再解釈が多彩に行われている。もともとメンズファッションを得意としてきたラフならではの「バー」ジャケットは、マニッシュな美しさと、メゾンの女性らしさ、官能的魅力が融合している。
【問い合わせ先】
クリスチャン ディオール
TEL:0120-02-1947