展覧会「〈若きポーランド〉—色彩と魂の詩(うた) 1890-1918」が、京都国立近代美術館にて、2025年3月25日(火)から6月29日(日)まで開催される。
ポーランドは、14世紀にはヨーロッパ最大の規模を誇ったものの、18世紀末には国家消滅を経験することとなった。以後、祖国の独立を求める動きが繰り返し起こったが、その実現は1918年のことである。そしてこの間、国を失った人々が自身のアイデンティティの拠りどころとしたのが、文学や音楽、絵画といった芸術であった。
こうしたなか、19世紀末から20世紀初頭にかけて、ポーランドの古都クラクフを中心に活躍した芸術家たちは、「若きポーランド」と呼ばれている。祖国の独立を願いつつ、そこに個人の心情を結びつけた「若きポーランド」の芸術家は、印象派といった当時ヨーロッパで生まれた美術動向を吸収し、日本美術にも目を向ける一方、地方に残る伝統文化を見出しつつ、ポーランドの芸術を模索したのだ。そのジャンルは絵画にとどまらず、応用芸術や文学にも及んでいる。
「〈若きポーランド〉—色彩と魂の詩(うた) 1890-1918」は、「若きポーランド」が生みだした芸術を包括的に紹介する、日本初の展覧会。代表的な絵画や版画に加えて、家具やテキスタイルなどの工芸品を含む、約130点の作品を一堂に集めて展示する。そのうち、約9割は日本初公開となる。
「若きポーランド」の前史にあたるのが、19世紀後半、ポーランドの歴史的場面を大画面に描いて名声を博した画家、ヤン・マテイコである。ポーランド・クラクフの美術学校で教鞭を執ったマテイコのもとからは、数多くの芸術家が輩出され、「若きポーランド」として活躍することになったのだ。本展の序盤では、マテイコの《1683年、ウィーンでの対トルコ軍勝利伝達の教皇宛書簡を使者デンホフに手渡すヤン3世ソビェスキ》などを目にすることができる。
「若きポーランド」の自然表現には、人間の内面を表現しようとする象徴主義的な傾向がある。一見写実的な自然の描写であっても、それらは人間の精神状態を通して解釈されたものなのだ。会場では、風景画を得意とした画家ユリアン・ファワトの《冬景色》や、鮮やかな色彩で神話やポーランドの風景を描く一方、グラフィック分野でも活躍し、ウィーン分離派のメンバーでもあったヴォイチェフ・ヴァイスの《ケシの花》などを展示する。
「若きポーランド」の作品に見られる象徴的な表現の背景には、当時のポーランドの芸術家による日本美術の受容があった。折りしも19世紀後半は、ヨーロッパで日本の美術・工芸への関心が高まり、数多くの作品がもたらされた時期。未知の日本文化は、独自の芸術を模索する「若きポーランド」の芸術家を触発するものでもあったようだ。本展では、レオン・ヴィチュウコフスキの《日本女性》やヴワディスワフ・シレヴィンスキの《髪を梳く女》など、日本美術からの影響を窺える作品を紹介する。
ポーランド独自の芸術を模索するなか、「若きポーランド」の芸術家が目を向けたのは、郊外の農村や地方に見られる風景、そして文化習俗であった。また、応用芸術の刷新にも関心を示し、地方の伝統的な様式や文様を取り入れたデザインを手がけている。会場の後半では、ポーランドの民族的伝統を重視した画家ヴウォジミェシュ・テトマイェルの《芸術家の家族》といった絵画のほか、家具やテキスタイルも公開する。
展覧会「〈若きポーランド〉—色彩と魂の詩(うた) 1890-1918」
会期:2025年3月25日(火)〜6月29日(日)
会場:京都国立近代美術館
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町26-1
※観覧料などについては追って告知
【問い合わせ先】
京都国立近代美術館(代表)
TEL:075-761-4111