ランバン(LANVIN)の2025年秋冬メンズ&ウィメンズコレクションが、2025年1月26日(日)、フランスのパリにて発表された。
メンズ&ウィメンズのアーティティックディレクターにピーター・コッピング(Peter Copping)が就任し、デビューショーとなった今季のランバン。イギリス出身のコッピングは、ソニア リキエル(SONIA RYKIEL)でキャリアをスタートし、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)ではマーク・ジェイコブスとともにウィメンズ部門の責任者を担当。その後、ニナ リッチ(NINA RICCI)などのクリエイティブディレクターを務めるほか、バレンシアガ(BALENCIAGA)のクチュール部門の責任者としても活躍してきた。
120年以上の歴史を持つランバンに携わるようになった今季、コッピングが体現しようと試みたのは、創設者ジャンヌ・ランバンへのオマージュ。女性と男性、母親と子供のための衣服ばかりでなく、香水やインテリアをも手がけるなど、いわば生活全体にシックさを提示し続けてきたランバンの遺産を、現代の生活へと呼び起こすものだといっても良い。
そのシルエットは、シャープで直線的に仕上げられつつ、絶妙な抜け感を漂わせる。リラクシングなシングルブレストジャケットや構築的なダブルブレストジャケット、やや短めの丈感に設定しだPコート、ダブルブレストのチェスターコート、チェック柄のバルカラーコート、装飾や素材感を凝らしたドレスなど、全体としてストレートなラインに仕上げた。
その参照点に、アール・デコを見ることができないだろうか。今から100年前、パリでいわゆる「アール・デコ博」が開催されたように、工業化が進んだ1920年代のヨーロッパ各地では、工業生産品と調和する幾何学的な装飾様式であるアール・デコが最盛期を迎えている。この様式は、建築や家具ばかりでなく、服飾にも広まり、ランバンもまた、活動的な「ギャルソンヌ・ルック」を取り入れて活躍した。
全体として直線的なシルエットが軸となっているところには、アール・デコの遠いエコーを聴きとることができる。何よりアール・デコとは、機能性と装飾性の融合であった。身に纏う衣服もまた、佇まいに品格を与えるとともに、身体の動きにマッチせねばなるまい。ジャンヌ・ランバンの遺産を現代に喚起するとき、アール・デコという様式は、日常に溶けこむ心地よいシックさへと読み替えることができよう。事実、今季のランバンでは、軽快なファブリックでゆったりと仕上げたトレンチコートなど、リラクシングな佇まいを随所に見て取ることができる。
一方、ドレスにおいては、優雅で官能的な表情が色濃く現れている。ストレートなラインで仕立てられたドレスにおいては、サイドを光沢のあるファブリックで切り替えるとともに、バックにスリットを設け、たおやかなドレープを含ませる。冊状のファブリックを連ねたドレスは、多彩に変化する表情を織りなすし、ティアードドレスには透け感のあるレースにきらびやかな装飾が波のように連なる。
精緻で華やかな装飾性もまた、スパンコールやビーズを使った装飾技術で人気を博した、ランバンの遺産を反映するものだろう。スパンコールが華やぐドレスはもちろん、トップスの首周りにきらびやかなビジューを用いるほか、シアーなTシャツにも、華やかなビーズ刺繍を施した。